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故佐野隆治会長を偲ぶメッセージ

柳沼 孝一郎 先生(1991年から現職)

プロフィール

神田外語大学副学長、外国語学部国際コミュニケーション学科国際ビジネスキャリア専攻教授、専攻長。同大ボランティアセンター長。

メキシコ国立自治大学哲文学部大学院を含め12年間メキシコに滞在、メキシコ近現代史が専門。NHKラジオ・テレビ講座講師を歴任。スペイン語基礎、スペイン語研究、ラテンアメリカ史などを担当。『スペイン語がびっくりするほど身に付く本』(あさ出版)、『現代メキシコを知るための60章』(共著、明石書店)、『アメリカのエスニシティ』(共訳、明石書店)、『カルブリ・メソアメリカの神話学』(共訳、文化科学高等研究院出版局)など。

佐野隆治会長の想い出 ~男純情の、煌く銀の星の如く

あの笑顔は忘れない。慈愛に満ち満ちた、限りなく優しい笑顔である。あの笑みは忘れない。すべてを包み込んでしまう、この上もなく温かいあの笑みと眼差しである。あの声は忘れない。励まし、鼓舞する、あの心の底から発する力強い濁声である。

ブリティッシュヒルズの完成が待たれる1993年の頃のこと―。きらきらと目を輝かせ夢を語る少年のように、果てしなく拡がるブリティッシュヒルズに託す夢を熱く語られたあの日のお顔は忘れない。テニスコートのある丘に立ち、ブリティッシュヒルズを眼下に眺める。その先にどこまでも続く紺碧の空に木霊する会長のあの熱き想いは忘れない。

フレッシュマン・オリエンテーション・キャンプのある春の夜、ブリティッシュヒルズへの想いを継がれ、ハウス長として長年にわたり尽力された佐野理事長と見上げたあの満天の星は忘れない。そして佐野理事長と酒井学長によって確実に継承されてきたあのKUISレガシーは忘れない。

その美しさゆえに「アンティルの真珠」とも称されるキューバの首都ハバナ。ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの軽快な演奏曲が流れるハバナ旧市街を縫って歩く。

彷徨い歩いた末に、キューバ葉巻で有名な老舗に遭遇する。ガラスケースから取り出されたキューバ葉巻を手に取り、じっと見つめる理事長の姿は「会長を案内したかったな...」と囁いているようだった。今頃は、あの世で、かのチェ・ゲバラとフィデル・カストロと会長の御三方で、極上のキューバ葉巻をこの上もなく美味そうにくゆらしていることだろう。情熱的で正義感にあふれ、誠と仁に生きる御三方は意気投合しているに違いないからである。

将来を担う学生諸君を常に想い、“野風増、野風増、男は夢を持て”と卒業の祝い会に声高に唄うあの雄姿は忘れない。そして、平成29年3月18日、土曜日、卒業式のあの日の午後、巨星は静かに旅立たれた....。

あらためて会長の遺影の前に立つ。為すべきを成し、克服すべきを超え、幾多の修羅場を乗り越えてきた御仁だからこその深遠なる笑みである。1964年東京五輪、それに続く68年メキシコ五輪を前に初来日したメキシコのアドルフォ・ロペス・マテオス大統領が好んで用いた「日本国民にとって微笑は雄々しさの表現」、その笑みそのものである。

願わくは安らかに眠られんことを.... Que en paz descanse.

ハカランダの咲くころ、墨都にて。



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