アジアには1日1ドル以下で生活する所得貧困者が6億9千万人。学校に行けない子ども、栄養不良、文化や環境の破壊など、開発途上国は共通の問題を抱えています。日本初の募金型公益信託「アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)」では、こうした社会の底辺で苦しむ人々が自立できるよう、過去25年にわたって現地NGOや住民組織に助成支援(累計アジア12カ国398件、助成総額約4億730万円)を行ってきました。ACTスタッフの現場体験談と活動紹介ビデオ「あなたの思いをアジアに」を通して、いまアジアの農村や都市で何が起きているのか、現場からアジアを考えてみませんか。
企業調査会社で全国企業倒産分析、情報編集などを担当後、2000年より「国際協力NGOセンター(JANIC)」、2005年4月より「アジア・コミュニティ・センター21」理事、事務局長代行・事業担当。2001年より「アジア・コミュニティ・トラスト」事務局を担当し、フィリピン、インドネシア、ネパール、カンボジア、インド、スリランカ等の現地NGOが実施する事業発掘調査、モニタリング、評価を行うほか、企業、団体、個人などからの支援(会員、寄付者、特別基金設定者)と現地事業を結ぶ橋渡しをしている。
本研究所の学生支援プロジェクトのひとつ「幕張チャリティフリマ@KUIS」(通称『幕チャリ』、下記参照)は、本年5月に第2回目が開催されたが、学生主催者である「神田外語大学CUP」の希望により収益金65万円が日本初の募金型公益信託「アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)」に寄付された。今回の講演はその贈呈式にあわせて、ATC事務局に依頼したものである。
世界の人口の過半数を占めるアジア地域には約34億人が暮らしており、1日1ドル以下で生活するいわゆる「所得貧困者」層は6.9億人、栄養不良者が5.2億人、不就学者は4,600万人といわれる。こうした貧困の背景にはいくつかの共通する課題が見られる。例えば農村部では、インフラや環境の不備、「緑の革命」などで普及した外来の改良品種や肥料への対応、市場へのアクセス、高利貸し、フィリピンや南米にみるような土地所有制度の問題などである。行政制度や汚職といった政治・社会問題も課題であり、また、疾病や貧困から来る家庭内の不和・暴力、離婚・蒸発、児童の非行化などの精神面でのケアも必要とされる。
1979年に発足したアジア・コミュニティ・トラストは、日本の大手信託銀行5社が受託者となって寄付金を受託・運用し、貧困に苦しむ人々の自助努力を支援する仕組みを日本で初めてつくった。以来25年にわたってインドネシア、フィリピンなどをはじめとするアジア12ヶ国に398件(総額4億730万円)の助成支援をおこなっている。この方式の長所は、継続的な助成を確保しうることと、現地の政府や自治体を経由しないで現地のコミュニティやNGOに直接的な支援をできるという点である。
主な対象分野は(1)教育・青少年の育成、(2)医療・保険衛生・社会福祉、(3)農業の振興・社会開発、(4)文化の振興・学術研究、(5)自然環境の保護・人間環境の保全である。例えば2004年度は、インドネシア、フィリピン、ネパール、カンボジア4国で12件の事業があり、うち7件は青少年教育に関するものであった。ネパールでは古紙リサイクル工場を立ち上げ、収益を地域住民の雇用確保と児童教育の支援にあてており、フィリピンでは将来の農村地域の発展をになう若者層を組織化し、リーダーシップや起業を指導するなど、現地の人々が考え出した独自のアイディアに基づく多彩なプロジェクトが進められている。
講師の鈴木氏は2000年から「国際協力NGOセンター(JANIC)」に勤務し、2005年より「アジア・コミュニティ・センター21」理事、事務局長代行・事業を担当している。あわせて「アジア・コミュニティ・トラスト」事務局も2001年から担当しており、フィリピン、インドネシア、ネパール、カンボジア、インド、スリランカ等の現地NGOが実施する事業発掘調査・モニタリング・評価を行うほか、企業・団体・個人などからの支援(会員、寄付者、特別基金設定者)と現地事業を結ぶ橋渡しをしている。
公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT):www.acc21.org/act