異文研キャンパス・レクチャー・シリーズ

第60回
異文研キャンパス・レクチャー・シリーズ

《親密圏の異文化問題を考える》第2回
「<異文化間友情>について
留学生たちと一緒に本音で語ろう!」

学生
パネリスト
チャ・ダレ(神田外語大学留学生別科学生・韓国出身)、
ホッシャ・ノゲイラ・ウーゴ(同・ブラジル出身)、
村上愛美(神田外語大学・英米語学科学生)、
冨貴大介(同・英米語学科学生)、
深田美紀(同・英米語学科学生)
司会
ギブソン松井佳子 (本学英米語学科 教授・当研究所 所長)
日時
2009年11月16日(月) 17:00~19:00 (開場:16:30~)
場所
神田外語大学(千葉・幕張)
ミレニアムホール

かつての日本は「等質社会」「均質社会」としてのイメージが強かったが、今ではさまざまな国籍、民族、文化をもつ人々が生活をともにする状況になっている。本大学で学んでいる200名を越える留学生のみなさんは、はたして日本人学生たちと友情を育むことができているのであろうか?異文化間友情を築いていくためには一体何が必要なのだろう?異文化間の友人関係におけるコンフリクトの実態・現実はどのようなものか?本大学における今後の課題とは?ここにはことばのみならず、生活習慣や価値観のちがいといった文化的要因が複雑に絡み合っているにちがいない。本学の学生6人の白熱した本音トークにどうぞご参加ください!

パネリスト紹介
ダレさん (留学生別科・韓国出身)
韓国のウルサンから来たチャ・ダレです。専門は韓国語学・韓国文学です。2年前、日本語が上手な従姉にあこがれて始めた日本語ですが、以来、ずっと勉強を続けています。昨秋、交換留学生としてこの大学へ来ました。向こうでは色々な国の友達とコミュニケーションする機会がめったにありませんでしたが、ここでは様々な国からの友達がたくさんいて、言葉以外にも様々なことが学べ、毎日楽しく過ごしています。
ウーゴさん (留学生別科・ブラジル出身)
ブラジルから来たウーゴです。「ウーゴ」は昔のドイツ語で「光る心」という意味です。人との交流が大好きでよく話しています。好奇心が強く、留学して遠くの人々と出会えることが子供のころからの夢でした。去年の9月に日本へ来て以来、異文化体験や、一人暮らしなどの色々な体験を通じて人間としても成長したような気がします。さらに成長するためには未知のことに触れるのが大切だと思います。お互いにこの世界で学び合いましょう!
スコットさん (留学生別科・イギリス出身)
私はスコットランドの西海岸にある小さな村に生まれました。アルバニアという東ヨーロッパにある国に住んでいたこともあります。日本でのホームスティをきっかけに日本語を勉強し始めました。
そして、世界中の様々な国を訪ね歩くうち、人間として最も大切なことは相手の文化との相違点をよく理解することだと気づくことができました。将来、もし、出来ることなら国際連合で働きたいと考えています。でも今は、とにかく大学を卒業することが先決!
村上 愛美さん (英米語学科4年)
大学では、英語の勉強以外に様々な事にチャレンジしたいと思い、NGOの学生支部であるサークル活動としてタイでボランティア活動、長年の夢であったオーストラリアへの留学をしました。それらの経験の中で、たくさんの人々と出会い、様々な価値観や文化に触れ、外国語が話せるということは自分自身の視野が広がるだけでなく、世界中の人々と繋がるツールになるという事を改めて実感しました。私が英語できっかけを得たように、たくさんの人に世界とつながる一歩を踏み出してほしいと思い、今は児童英語教師を目指して勉強中です!
冨貴大介さん (英米語学科4年)
先祖代々日本人。日本生まれの日本育ち。芸術の分野で幅広く活動しており、高校時代、美術では神奈川県高文連奨励賞を2年連続受賞し、本学在学中にはオペラ「おでん座」をはじめ、小田麻子、山崎智、佐藤亜里紗などの若い演奏家のコンサート・チラシなどを手がけています。また、音楽においては作曲とピアノ演奏を行っており、現在、横浜の某レストランにてピアノ演奏のアルバイトをしています。ルネッサンスからバロックにかけての音楽史に興味があります。
深田 美紀さん (英米語学科4年)
大好きな家族と友人に恵まれていることをとても幸せに感じています。
憧れのKUISに入学し、英語を学んで気づいたこと。それは「異文化を知るためには、まず自分の国を知ることが必要不可欠」だということ。その思いから茶道部へ入部しました。茶道を通じて、美しい日本の「和」と人と人のつながりを大切にする「人の和」、これら2つの和の心を学び日本人であることに誇りを持つことができました。感謝の気持ちを忘れず、残りの学生生活を充実させたいと思います!
講演会報告
(奥島美夏、異文化コミュニケーション研究所)

シリーズ第2回にあたる今回は、本大学で学ぶ200名を越える留学生自身を事例として、日本人学生たちとの間にどのように友好関係を築いているのか、そのためには何が必要で、どのようなトラブルや葛藤を経験してきたのかを紹介・論議してもらった。

パネリストとなった5人の学生たちは、外国語・外国文化に興味をもっているばかりでなく、趣味・アルバイト・将来の職業に向けた準備などにおいても、茶道・演奏活動・海外ボランティア・児童教育など多彩な活動に携わってきた。こうした体験を通じて日々出会う人々との交流がすべてある種の「異文化体験」であり、自身の視座を広げるとともに多様な出自・意見をもつ他者と共生してゆく術を学ぶ貴重な機会であることを認識していることが何より重要である。これを基盤として、他者を理解し尊重しようと努力する姿勢が生まれ、摩擦が生じた際にも一歩下がって冷静に分析し、時には楽しむことさえできるようになってゆくという。

また、性別や個人的な見解の違いによる摩擦が、ともすると国籍や文化の違いによる摩擦にすり替えられがちになるという現実や、海外の留学生同士の交流のように異なる言語話者たちが第三国で共同生活を営む難しさについても指摘があった。こうした場面でどのように対処したのかを各自の経験に基づいて語り、意見交換・批判的検討を経ることが、「国際交流」といった聞こえはよいが曖昧な言葉だけではすまなくなった現代社会の半恒久的多文化共生に正面から取り組み、実践してゆくことなのである。

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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