多文化共生時代の日本の小中学校には外国人児童生徒が年々増えているが、しばしば文化的・社会的相違に直面している。彼らの内面的な葛藤と克服のプロセスを、八千代市の生徒の体験談から紹介し、私たちの課題を明らかにしてみたい。そして、外国人児童生徒にとって第二言語となる日本語(Japanese as a Second Language:略称JSL)の指導に取り組みつつ、彼らのアイデンティティや日本・日本人との共生感も育てる教育、すなわち母国文化や母語の尊重・維持をめざす教育の在り方を考えてみよう/p>
東京学芸大学教育学部中等教員養成課程数学科卒業。千葉県八千代市立中学校教諭をへて現在に至る。南米系を中心に外国人児童生徒と関わって18年程になる。前任地の八千代市村上地区では小中5校からなる外国人児童生徒受入整備連絡会を結成して受入体制づくりを進め、平成21年度千葉県委託多文化共生推進モデル事業「むらかみインターナショナルこどもサミットの開催」も実施した。
日グローバル化に伴い外国人人口が急増する日本国内では、定住化する労働者や結婚移民の子弟の教育問題も各地で深刻化している。特に、ここ数年の金融危機の影響で自動車製造などの工場を解雇された日系南米人の子供たちが、いわゆる外国人学校から日本の小中学校へ転入したり、そのいずれの学校にも学費が払えず通学を断念したりするケースが増えている。
その中で、千葉県八千代市では地元農家の産品を利用した食品加工業が不況によらず成長を続けており、そこへ流入する外国人労働者の子弟も周辺小中学校に急増した。日本語指導を必要とする児童生徒数は現在小学校に139人、中学校で57人おり、うち約半数が食品加工工場の集中する工業団地の地域内に住んでいる。児童の4分の3強がブラジル、ペルー、フィリピンの3国籍からなる。このような急激かつ局地的な変化に対して、各学校や地元教育委員会は全力で対処を試みたが、現実には十分な加配教員やチューターなどを確保する予算が取れず、また日本語さえできれば問題解決とみなす、外国人生徒の母語ができる協力者に指導そのものも任せてしまう、などの問題もあるという。
よって、最近は外国人生徒にとって第二言語となる日本語(Japanese as a Second Language:略称JSL)カリキュラムを、中部地方などの先進地域の事例に基づいて参照し、生徒のアイデンティティや日本・日本人との共生感も育てる教育、すなわち母国文化や母語の尊重・維持をめざす教育の在り方を模索している。折しも千葉県庁委託の多文化社会づくり推進事業(神田外語大学多文化共生研究会を含む)や県警外国人集住地域総合対策協議会なども八千代市への支援に乗り出しており、神田外語大学教員・学生有志のサポーターグループを含めた各方面と提携しつつよりよい指導システムをめざしている。