三東日本の地震・津波・原発事故を経て、日本はこれまでにない大きな変化を余儀なくされている。日本の人々は海外から寄せられたさまざまな形の支援を受けて力づけられる一方で、外国人の留学生や労働者の方々は日本に来るべきか、とどまるべきか、自国へ帰るべきかなどの選択を迫られ、日本への思いは複雑であろう。今回留学生と日本の学生6名が集まり、自らの体験や気持ちを自由に発表討議し、異文化間のいろいろな問題について真摯に語り合い、フロアの方々との活発な意見交流ができればと考えている。どうかみなさんお気軽に足をお運び下さい。
東日本大震災以降、日本の留学生をとりまく状況は大きく変化した。また、日本や日本人に対する日本国外からの見方も震災前とは異なっている。こうした状況をどのように捉え、対応していくべきかについて、異なる立場から議論がなされた。パネリストはブラジル・ベトナム・スペインからの留学生3名と日本人学生3名の計6名、司会進行はギブソン松井佳子本研究所所長であった。
まず、パネリストによって震災時の体験が語られた。日本国内で地震を体験したパネリストはいずれも最初は日常的な地震だと感じたが、後に周囲の状況やメディアにより事態の深刻さを実感したという。
次に、震災後日本にいた留学生が抱えた大きな問題の一つとして、帰国問題が取り上げられた。日本内外でさまざまな情報が錯綜する中、彼らは帰国の決断を自分の意思でしなければならない状況にあったという。その際、決断の決め手となったのは母国の家族の心情であった。家族を説得することができた留学生もいたが、家族の強い要望によって帰国した留学生も多かったようだ。
さらに、留学生がこうした状況に置かれてしまった背景として、日本と日本外でのメディアのギャップが指摘された。両メディアの異なる見解の狭間で、留学生はその情報の信頼性を自らの判断で解釈する必要があった。一方で、留学生寮の管理人からの情報がわかりやすく、信頼できたというエピソードも語られ、人的ネットワークの重要性が浮き彫りになった。
以上のような話を踏まえ、神田外語大学が非常時にどのような役割を果たすべきかという点に議論は発展した。これについてはフロアからも意見が寄せられ、留学生・日本人学生双方がもつ情報を共有し、ともに考えていくようなコミュニティづくりの重要性が強調された。
最後に、各パネリストにより、東日本大震災を体験した後の自分の意識の変化について、原発に対する持論や今後の自分のあり方について決意が表明された。