令和3(2021)年4月、神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部は、留学を必修にしながら、世界の平和構築に貢献できる人材教育に挑戦することを目的に開設されました。そして、令和4(2022)年2月14日から21日にかけての8日間、「海外スタディ・ツアー2.0 リトアニア研修」を実施しました。学生が真の意味で平和とは何かを考えるには、海外の現地を実際に訪れ、世界の現実を体感することが不可欠である。その信念のもと、コロナ禍のただ中であり、ロシアのウクライナ侵攻が現実味を帯びてきた時期に学生の海外派遣に踏み切りました。同時に、その挑戦は教職員にとっても世界の平和構築に貢献する人材育成という学部のミッションに正面から向き合う機会となったのです。本シリーズでは、学生と教職員がそれぞれの立場で難題に挑み、成長した過程をつづっていきます。プロローグでは、リトアニア研修の経緯と現地での研修の概要をご紹介します。(文中敬称略)
世界では今、環境や人権、生命の安全などを脅かす課題が山積しており、その課題に対応できる人材を育成することが急務である。そのような社会的要請に応えるには、神田外語グループが昭和32(1957)年の創業以来、掲げてきた建学の理念「言葉は世界をつなぐ平和の礎」を体現する新学部の設立が不可欠として、神田外語大学はグローバル・リベラルアーツ学部(以下、GLA学部)を令和3(2021)年4月に開設した。目指すのは、社会課題の解決に取り組み、世界の平和構築に貢献する人材の育成である。
そのカリキュラムの大きな特徴のひとつは、1年次前期の「グローバル・チャレンジ・ターム」である。世界の4つの国・地域(リトアニア、インド、マレーシア・ボルネオ、エルサレム)からひとつを学生に選ばせ、現地に派遣する「海外スタディ・ツアー」を実施するプログラムだ。学生は、それぞれの地域の抱える紛争や環境問題、多文化共生などの課題や歴史を肌で感じることで自らの進む道を見つけ、1年次後期以降のリベラルアーツの学びを加速していくのである。そして、3年次後期はニューヨーク州立大学での半年間に及ぶ留学で自身の関心を深めていく。
この壮大なカリキュラムは昭和62(1987)年4月の開学以来、神田外語大学が培ってきた教育モデルとはまったく異なるものだ。GLA学部の新たな教育モデルを構築することは、すなわち、教職員にとっても未経験のことである。教え育てる側も意識を変え、自身に成長を課していかなければならない。神田外語グループとGLA学部の理念、世界が抱える社会課題、その解決に貢献できる人材の育成。その真意の一つひとつを、教職員自身が学生の学びを実現するための行動を通じて体現し、結果として一人ひとりが成長していく。そのような期待も込め、神田外語グループの理事長の佐野元泰はGLA学部を発案したのである。
だが、GLA学部の挑戦には、スタート時点から巨大な壁が立ちはだかった。
令和2(2020)年初頭から新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、2021年4月に入学したGLA学部1期生の海外スタディ・ツアーは中止を余儀なくされた。
大学ではコロナ禍の状況で実施できる最善の代替案として「海外スタディ・ツアー2.0」を立案し、6月27日から7月9日にかけて神田外語グループの国際研修施設「ブリティッシュヒルズ」(福島県天栄村)において、リトアニアとエルサレムへのオンライン留学を実施。その後、千葉・幕張の神田外語大学にてインドとマレーシア・ボルネオへのオンライン留学が行われた。
開設当時のカリキュラムでは4つの国と地域のいずれかひとつを選び海外研修を行うはずだったが、オンライン留学になったことで、学生たちは、全ての国と地域について学び、所定の単位を修得したのである。
また、ブリティッシュヒルズでの合宿中には、福島という立地を生かし、東京電力福島第一原子力発電所事故についての研修を実施。東日本大震災による原子力発電所の事故、そして原発が立地する双葉町の方々や東京電力ホールディングス福島復興本社の社員との交流座談会を通じ、日本国内に存在する重大な課題について学ぶことができたのである。
学生たちにとっては有意義な経験となった海外スタディ・ツアー2.0であり、所定の単位も修得した。だが、GLA学部の教職員は学生に世界の現実を現地で体感させることにこだわり、海外派遣の可能性を模索し続けた。どれほど知識をため込んでも、どれほどオンラインで理解しても、現地で感じることには及ばない。1年次の若い学生たちであれば、なおさらである。現地での体感が、学生たちの問題意識を呼び起こし、行動を導いていく。それこそがGLA学部の教育モデルなのである。
研修先の4つの国と地域のうち、入国後に待機期間がなく研修活動に入れるのはリトアニアのみである。その可能性に懸けて、国際戦略部では現地の大学との調整を図ってきた。そして、令和4(2022)年2月14日から8日間の日程でリトアニア研修が決行されたのである。GLA学部に在籍する学生の6割に当たる33人がこの研修に参加した。
出発直前の2月1日、日本国内の新型コロナウイルス感染症の新規陽性者数は10万人を突破し、過去最高(当時)を記録した。同日、人口約281万人のリトアニアでも新規陽性者数が1万人以上に達していた。外務省はリトアニアを「感染症危険情報レベル3」と位置付け、「渡航中止勧告」を発した。
また、2月8日には、リトアニアのイングリダ・シモニーテ首相がイギリスのジョンソン首相との会談後、ロシアがウクライナの隣国、ベラルーシに軍隊を駐留させていることを踏まえ、リトアニアに北大西洋条約機構(NATO)部隊の増強が必要という考えを示したと、ロイター通信が報じた。ロシアのウクライナ侵攻の緊張は高まり、リトアニアも極めて重要な立場にあったのだ。
GLA学部のリトアニア研修は、日本で、そしてリトアニアでコロナが猛威を振るい、ロシアのウクライナ侵攻が現実味を帯びてきたさなかでの海外学生派遣だったのである。
第2次世界大戦中にナチス・ドイツやソビエト連邦に侵略されながらも、独立を勝ち取ったリトアニア。前述の海外スタディ・ツアー2.0で、学生たちはオンライン留学によってリトアニアの歴史や文化を学びつつ、アカデミックなガイドによるバーチャルツアーを体験した。
今回の現地研修ではカウナス市とヴィリニュス市に滞在し、リトアニアの歴史を学ぶうえで重要な史跡や博物館を訪れるとともに、提携するヴィータウタス・マグヌス大学の学生たちとの交流を中心にプログラムが組まれた。
現地に到着後、学生たちがどのような研修を行ったかを、現地から同行した教職員と学生によって毎日発信されたブログ記事からの抜粋などにより紹介する。
※なお、現地からのレポートの臨場感を伝えるため、文中の表記や表現はできるだけ原文通りに掲載しました。
杉原千畝記念館
リトアニアでのスタディ・ツアー、カウナスに来た日本人が必ず訪れる杉原千畝記念館訪問から開始です。同記念館は、昨年7月のブリティッシュヒルズで実施した本学協定校のヴィータウタス・マグヌス大学によるオンライン学習で、人文学部講師でいらっしゃるアルビダスさんの解説付きのバーチャルツアーを学生は受講済みです。
本日は、 “生”アルビダスさんのガイドでの訪問でしたが、学生は、その際の記憶を蘇らせながら、1940年の夏、短期間で杉原氏がおこなった人道支援に想いを寄せました。記念館訪問後は、カウナス駅、メトロポリス・ホテルと、杉原氏が、最後の最後までビザを発給し続けた場所を巡りました。(副学長 金口恭久)
注)杉原千畝(1900~1986)外交官。第2次世界大戦中、日本領事館領事代理としてカウナスに赴任。ナチス・ドイツによって迫害されていた多くのユダヤ人にビザを発給し、亡命を手助けした。「東洋のシンドラー」とも呼ばれる。
カウナス市街地ツアー
カウナスのネリス川とネムナス川が合流する三角地帯に立地するのがカウナスの旧市街です。学生は、アルビダスさんから、カウナスの歴史について聞きながら、白鳥と呼ばれる瀟洒なバロック様式の旧市庁舎やリトアニア最大のゴシック様式のペトロ イル ポヴィロ大聖堂を歩いて見学しました。通常は観光客で一杯の旧市街ですが、コロナ禍で観光客はまったくと言ってよいほど見かけませんでした。(副学長 金口恭久)
パジャイスリス修道院見学
18世紀バロック風のシンメトリーの、塔も時計も全て対(つい)になった印象的な女性の修道士のための修道院でしたが、幾多の変遷を経て、現在は博物館として公開され、一部はホテルとして活用されています。ここでは、学生は、修道院の歴史を通して見たリトアニアとポーランドの関係やヨーロッパにおけるキリスト教の歴史について、ガイドのシモーネさん(アルビダスさんの配偶者)から学びました。(副学長 金口恭久)
2月16日はリトアニアにとって何よりも大事な「独立記念日」です。リトアニアは、第1次世界大戦下の1918年のこの日、ロシアから独立を宣言しました。自らの血を流し勝ち取った国の独立に対し、リトアニアの国民は、現在もなお、強い自負と誇りを感じています。
今回のスタディ・ツアーは、この春休みに実施すると決めたものの、コロナ禍のなかで日程を確定することが難しい状況にありました。そのようななかでも、ヴィータウタス・マグヌス大学から、学生がリトアニアをより良く知るために、独立記念日を経験させてあげることはどうかとの提案があり、私たちも、是非2月16日を含んだ日程で実施したいという強い思いのもとに、最終的に実現したものです。(副学長 金口恭久)
ヴィータウタス大公戦争博物館見学
博物館内では、リトアニアの今までの歴史に関わるいろいろなものが展示されていました。表記がリトアニア語のことが多く、理解することが難しい時は本日も引き続きガイドを務めてくださったアルビダスさんからの説明を聞いてより深い理解を目指しました。筆者が印象に残っているお話はニューヨークからカウナスまでノンストップでの飛行に挑戦した2人の英雄の話です。残り300kmのところで墜落してしまい、成功することはありませんでしたが、リトアニアでは今でも英雄として記録されているそうです。(GLA学部 学生 瀬戸山未羽)
独立記念セレモニー見学
その後独立記念セレモニーに参加しました。明日お会いするカウナス市長からの挨拶を聞いた後、パレードのような行進を見ました。現地のリトアニア人しかいない中にアジア人がいたからなのか、多くの学生が現地の人から声をかけられ、どこ出身なのか、何をしているのかと質問されたり、中にはセレモニーの説明を英語でしてくれたリトアニア人の方もいらっしゃったそうです。(GLA学部 学生 瀬戸山未羽)
国立チュルリョーニス美術館見学
国立チュルニョーニス美術館を訪れました。リトアニアの文化に関わるものがたくさん展示されていて、独立記念日のセレモニーに参加して気分が上がっていた学生たちもそれぞれ何かを感じ取るために真剣に展示を見ていました。(GLA学部 学生 瀬戸山未羽)
ヴィータウタス・マグヌス大学生との交流会&キャンパスツアー
ヴィータウタス・マグヌス大学にて日本語を学ぶ現地大学生と交流会を行いました。コロナ禍の今、なかなか海外の大学生と直接話す機会がない学生にとって、ヴィータウタス・マグヌス大学の学生との交流会はとても刺激的な時間となったようでした。初めは緊張していた学生もリトアニアと日本文化についてのクイズを通じ徐々に打ち解けていきました。交流会を終えた学生からは、「直接話すことでさらにお互いの文化の理解を深めることができた」「日本についてももう少し詳しく紹介できればよかった。さらに日本文化についても深く学びたい」などの声が聞かれました。(国際戦略部 牧田亜矢香)
午前中はヴィータウタス・マグヌス大学(Vytauto Didžiojo University:VMU)を訪問し、学生との交流後、同大学の教授によるショートレクチャーを受けました。夏のオンラインスタディー・ツアー後、初めての英語での海外大学の授業は、英語力と教養力、それぞれの進歩を確認することのできる貴重な機会となりました。
ショートレクチャーの後は各自で自由にキャンパス内を散策し、昼食を取りました。独立記念日の翌日ということもあり、食材の調達が十分にされず、メニューが限られているお店もありました。独立記念日、または、建国記念日などをあまり盛大なイベントとして扱っていない日本ではあまりない状況をとても新鮮に感じました。
ネットでは分かりづらい情報も現地の人に尋ねることによって、事実だけでなく、彼らとのコミュニケーションを通して、ローカルな情報も知ることができました。互いに母国語ではない言語でコミュニケーションを取ることができると考えると、またそこに興味深さが見える良い体験となりました。(GLA学部 学生 田邉蒼来)
カウナス市役所訪問
カウナス市役所前には、リトアニアの国旗と共に日本の国旗が掲げられていました。出発前の心配は杞憂に終わり、リトアニアの方々は今時珍しい日本からの来客を温かく迎え入れてくれているようでした。(国際戦略部 牧田亜矢香)
昼食後はカウナス市役所にて、マンタス・ジュルグティス副市長様との交流の機会というとても貴重な時間を過ごしました。ホール内は国連本部のようなつくりになっています。質疑応答の時間では、学生それぞれが気になる分野の質問を通して、より深くリトアニアを知ることができました。(GLA学部 学生 田邉蒼来)
第9要塞博物館見学
元々ロシア軍によって建設された第9要塞は、第二次世界大戦中のリトアニアのナチス占領下、ユダヤ人の絶滅収容所として使用された歴史的に重要な場所でもあります。ショッキングな内容も少なくない第9要塞ですが、平和について学ぶGLAの学生たちは、展示を食い入るように見つめ、ガイドの方の説明を一言一句逃すまいと必死に耳を傾けていました。(国際戦略部 牧田亜矢香)
カウナス市役所訪問後は、第9要塞博物館(9th Fort)へ移動し、戦争の歴史を学びました。 リトアニアからの視点の出来事を、実際の場所で五感を使って学ぶことは、それぞれの興味関心を引き出し、教養を深めるとても良い体験となりました。隅から隅まで、それぞれの関心に従って、学生自身が積極的に展示物を観覧していました。(GLA学部 学生 田邉蒼来)
※この日は午前から帰国に向けたPCR検査が実施され、検査を終えた学生は自由行動となった。
リネンサロン Jaukūs namai 見学
夕方からはリネン(亜麻布)ショップを訪れ、伝統的なリネンの製造工程を学びました(リトアニアのリネンの歴史は大変古く、リトアニアの風土が栽培に適していることから16世紀以降、生産が盛んになり、その後輸出産業へと成長したといわれています)。オーナーさんは日本が大好きで、6回訪問されたことがあるとのことです。カウナスの街で出会ういろいろな方が日本を知ってくれ、好きでいてくれていることに感動した様子でした。(国際戦略部 根本宜邦)
リトアニア語で「居心地の良い家」という意味のリネン屋さんJaukūs namaiでのショッピングについて、感想を述べたいと思います。リネンとは服などの衣類の材質の一種のことであり、日本のリネン生地の大部分はリトアニアから輸入されているのだそうです。そんなリトアニアで有名なリネンで作られた商品を販売するショップに行き、リネンを作る方法なども教えてもらい、リトアニアの文化を肌で感じる機会となりました。(GLA学部 学生 高野好右)
Hashi Club交流
夜には、日本文化のワークショップやイベント、日本語スピーチコンテストや討論会などを企画・運営する学生団体、Japanese Club Hashiとの交流会がありました。さすが本学の学生です。積極的に同クラブのメンバーに声をかけ、すぐに打ち解けた様子でした。
杉原千畝記念館の一室をお借りして実施されたこともあり、リトアニアと日本の関係や杉原千畝について何を学んできたのか、自分がどう思ったのかなどをテーマに話す学生も多くいました。これまで蓄積してきたリトアニアについての考察や思いを言語化してアウトプットする非常に有意義な機会となりました。(国際戦略部 根本宜邦)
そして本日最大のイベントである「橋クラブ」(Hashi Club:日本語や日本文化に興味を持っているヴィータウタス・マグヌス大学の学生で構成されたサークル団体)との交流会がありました。まず初めに、橋クラブについてのプレゼンを聞き、その後はグループに分かれてお話し会をしました!
話題は日常的なことから学んでいることの話までまちまちで、中には、もっと多くのことをしゃべりたいということもあり、その後の夕食を橋クラブのメンバーと共にした人もいました!それぞれがそれぞれで自分たちなりの会話をし、自分たちにとって有益な時間になったのではないかと思います。(GLA学部 学生 高野好右)
ヴィリニュス旧市街ツアー
ヴィリニュスに到着後、まずは旧市街を散策しました。石畳の細い道が迷路のように入り組んだ旧市街には、ゴシック、ルネサンス、バロックなど様々な様式の歴史的建造物が残され、ヴィリニュスの歴史地区として1994年、世界遺産に登録されました。カウナスとはまた違う、カラフルでヨーロッパの雰囲気を感じる美しい街並みに学生たちも感動した様子でした。(国際戦略部 牧田亜矢香)
旧市街地のツアーでは、今までいたカウナスとは違い、フランスやイタリア、ロシアなど、より多くの国の文化が入り混じる街並みが広がっていました。学生の多くは綺麗な街並みに感動し、ツアーの方が語るヴィリニュスの歴史に耳を傾けていました。(GLA学部 学生 友近菜那)
駐リトアニア日本国大使表敬訪問
学生3名(水尻颯斗さん、友近菜那さん、柳瀬帆名さん)と教職員は在リトアニア日本国大使館を訪問しました。民間から大使に着任された尾崎哲大使から直接お話を伺い、リトアニアと日本の関係について改めて考える大変貴重な機会となりました。(国際戦略部 牧田亜矢香)
昼食には先生方と代表の学生3名が駐リトアニア特命全権大使尾崎哲様と会食をしました。大使とお話ができるとても貴重な機会に緊張しましたが、とても有意義な時間でした。リトアニアの文化や風土をはじめ、大使になられた理由などさまざまなことをお話することが出来ました。(GLA学部 学生 友近菜那)
リトアニア大公宮殿国立博物館見学
夕方には、リトアニア大公宮殿(Palace of the Grand Dukes)とKGBジェノサイド博物館を訪れました。もともと15世紀にリトアニア大公国の統治者と将来のポーランド王のために建設されたリトアニア大公宮殿は、ロシア帝国時代の19世紀に取り壊されてしまいましたが、リトアニア独立運動の高まりとともに再建の動きが出始め、2013年に完成を迎えました。現在は、宮殿の一部が国立博物館として一般公開されており、発掘された再建前の建築資材なども見ることができます。(国際戦略部 牧田亜矢香)
大公宮殿は時代ごとに様式が変わるのがとても興味深かったです。日本の建築物は平家なことが多いので沢山の部屋があることも驚きでした。(GLA学部 学生 友近菜那)
KGBジェノサイド博物館見学
新市街にあるKGBジェノサイド博物館は、旧ソ連の秘密警察KGBが実際に1940年から1991年の50年間、総本部として使っあていた建物で、多くのリトアニア人やユダヤ人が収容され、拷問や虐殺が行われた場所でもあります。実際に使われていた拷問部屋の壁には銃弾の跡などがあり、かなりショッキングな施設でしたが、それでもガイドの説明に一生懸命耳を傾け、学生同士で積極的に意見を交換する姿が印象的でした。(国際戦略部 牧田亜矢香)
旧ソ連の秘密警察(KGB)の博物館では1991年まで旧ソ連が実際に使っていた刑務所を見学しました。KGBが拷問や処刑をしたところや、その跡が全てそのまま残っているのでその迫力はすごかったです。今までは自分とは縁のない外国の出来事と思っていたことがとても身近に感じました。(GLA学部 学生 友近菜那)
※上記の現地レポートは KUIS Styleにて全文を閲覧できます。
( https://www.kandagaigo.ac.jp/kuis/blog/tag/gla/ )
研修ツアー終盤の2月18日、学生と教職員は新型コロナウイルス感染症のPCR検査を受け、全員が陰性と診断され、20日にヘルシンキ経由で成田への帰途に就いた。21日の成田到着後は、空港での検疫所が確保する宿泊施設で3日間、さらに自宅での4日間の待機期間を経験した。
帰国3日後の2月24日、ロシアがウクライナへの侵攻を開始。学生たちは旧ソビエト連邦に侵略されたリトアニアの歴史を学んだうえで、ロシアのウクライナ侵攻という紛争の現実を宿泊施設での隔離期間中に知ることになった。さらに、2月28日には本研修で利用したフィンエアーの成田・ヘルシンキ便の運航停止が発表された。振り返ってみれば、ロシアのウクライナ侵攻が勃発する直前のタイミングでのツアーの催行であり、日程が数日ずれていたら帰国もままならない状況だったのである。
以上が、神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部が決行した「海外スタディツアー2.0 リトアニア研修」の概要である。本シリーズでは、この研修に参加した2人の学生、研修の実務を担った国際戦略部の職員、そして副学長にインタビューを行い、それぞれの視点から見たリトアニア研修を紹介していく。(了)