本物の英国文化を体現させるために

第1回 佐野隆治会長『パスポートのいらない英国を創る』

リゾートと研修施設の融合はちょっと早すぎた
何をやるにしても、時代の先を行きすぎるんです

ブリティッシュヒルズのコンセプトは、「リゾートインスティテュート」です。研修所とリゾートを融合して、教育とホスピタリティの両方を提供する。アメリカに、国際会議を行うスキー場があります。スキーと国際会議が一緒になるなんてイメージできませんよね。でも実際にそういう施設がある。ならば、研修所とリゾートもありだろうと、「リゾートインスティテュート」で行くことに決めました。

ただ、日本人はどうしても分けたがります。リゾートはリゾート。研修所は研修所。色んな方から、「ここはホテルですか、それとも研修所ですか?」とよく聞かれました。職員たちも分からない。「どうやって説明すればいいんですか」と言われましたね。今でこそ、まったく違う分野の事業やサービスを融合するのは当たり前になりましたが、当時は早すぎたんです。ほんと、何の事業をやるにしても、時代の先を行きすぎるんです(笑)。

オープンからの10年間は、経営的には厳しかったですね。すでにお話した通り、ブリティッシュヒルズは、修学旅行の利用も見込んでいました。結果的には、教育研修旅行が集客の柱になっていきますが、それには時間がかかった。こういった施設は、いくら口で説明しても分かるものじゃありません。

でも、学校の先生に一度使ってもらえれば、翌年も来てくれる場合が多いし、その先生が転勤すれば新しい学校でブリティッシュヒルズへの旅行を提案してくれる。それが一番の宣伝なんです。ただ、それには時間がかかった。その時間は読みきれませんでしたね。

経営が軌道に乗るまで個人資産をつぎこんだから、もう、自分の財産なんてありませんよ。まぁ、死んでも棺桶にはお金は持っていけませんからね。宿泊棟は樹齢数百年のオーク材を使っているから、同じ歳月だけ保つし、マナーハウスは鉄筋だけど、100年ぐらいは大丈夫でしょう。こういった施設があって、若い連中が本気で使ってくれれば、そのほうが財産を残すよりもいいと思いますね。(7/8)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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