異文化理解の先駆者たち

第1回 古田暁神田外語大学名誉教授『異文化コミュニケーションの夜明け』

障がい者と健常者のコミュニケーション
他の人は選ばないテーマとの出会い。

修士課程で学び始めた当初は、ジャパンバッシングなど日本と欧米諸国のミスコミュニケーションについて研究しようと考えていました。同じ研究課程には他にも日本人留学生がいましたが、ほとんどの学生が日本に関連するテーマで研究を進めていました。修士課程もかなり進んだころに、「障がい者と健常者のコミュニケーションも、異文化コミュニケーションのバリエーションのひとつである」という論文に行き当たりました。私は思わず、「それって、研究していいんですか?」って声を上げてしまうほど驚きました。

国対国や、人種対人種ではなく、異なる身体を持つ人間同士の異文化コミュニケーション。これは他の人は選ばないテーマです。「これだったら私も知っている」と思いました。ブレイクスルーでしたね。そのころには博士課程に進むことを決めていたので、自分なりの視点を探していました。コミュニケーション分野での、こういった視点での研究はあまり多くないことも知りました。他人と同じことを研究していても駄目ですからね。それ以来、障害学についても学ぶようになり、障がい者とコミュニケーション、障がい者文化、障害の文化比較などへと研究を広げ、さまざまな論文を書くようになりました。

博士論文のテーマは日本人の中途障がい者についてです。人生の途中で障がい者となった人が、コミュニケーションを通じてどのように適応していくかを研究しました。適応にはいくつか種類があります。身体的適応、社会的適応、そしてコミュニケーションでの適応です。中途障がい者がコミュニケーションを通じて、どのように障がい者という社会的な役割を獲得していくかを観察やインタビューを通じて研究し、論文を執筆しました。

オクラホマ大学に留学していたときも、帰国すると神田外語大学の異文研に遊びに行っていました。実家からも近かったし、研究所に行けば久米先生や研究員の方にお会いできますからね。平成12(2000)年の6月には完成したばかりのミレニアムホールで行われた「異文研キャンパス・レクチャー・シリーズ」にも参加し、遠山淳先生(桃山学院大学教授)の講演を聴き、そのレポートを異文研のニュースレターに寄稿しました。1、2年おきに帰国して大学を訪れるたびに新しい建物ができていくのを見ながら、「また少し大きくなったなぁ」と感じていましたね。(4/9)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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