異文化理解の先駆者たち

第5回 クリフォード・クラーク『日本人とアメリカ人、その懸け橋として』

外国人学生とアメリカ人学生が
互いに尊敬し、相手を学ぶワークショップ

外国人学生アドバイザーの仕事は主にふたつあります。ひとつは学生との個人面接によるカウンセリングです。「寮のルームメートが大っ嫌い」「先生が私を無視して、面談をしてくれない」といった相談にのるのです。私自身がウエイク・フォレスト大学での学部時代に同じような問題を抱えていたので、外国人学生たちの心情は十分に理解できましたね。

もうひとつは、学生団体による異文化交流プログラムの開発を支援することです。アメリカ人学生、外国人学生、ホストファミリー、教員を対象としたもので、文化を超えたコミュニケーションを育むことを目的としています。参加者は、プログラムを通じて自分自身を理解し、相手を理解します。それはキャンパスでの人間関係や生活、そして勉学も豊かにしていくのです。このほかにも私は、学生が大学から財政援助を得たり、アメリカ政府から労働許可を取得する手伝いもしました。

1967(昭和42)年、私は「異文化コミュニケーション・ワークショップ(ICW)」を考案しました。ワークショップの目的は、外国人学生とアメリカ人学生が互いの文化を学びながらより深い関係を構築することです。外国人学生の多くは、アメリカで学んでいても、生涯をかけて付き合えるような友情をアメリカ人との間で育むことができません。当時も今も変わりませんが、大学は異文化コミュニケーションを通じて学生同士の相互作用を起こし、深い関係性を構築することを後押ししなければなりません。それこそが、複数の文化が存在するキャンパスでの教育や生活、そして個人的な体験の質を向上させるのです。この関係の構築にはICWのような前向きな姿勢のサポートが必要なのです。文化を超えた交流に敬意を払うICWを経験した学生たちの間には深い友情が芽生えることがよくありました。

私と同僚たちは、全米の何十人もの外国人学生アドバイザーたちに対して、このワークショップを実施できるファシリテーターの養成研修を行いました。各大学でワークショップが行われるようになり、外国人学生の全米組織であるNAFSA(National Association of Foreign Student Association)も各大学でのワークショップを支援するようになりました。私はNAFSAでは初となるコンサルタントも引き受けて、1969(昭和44)年から1971(昭和46)年にかけて、全米の22大学で異文化コミュニケーションのプログラムを立ち上げていきました。そして、3年間の仕事で最後に訪れたのが、スタンフォード大学だったのです。(4/9)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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