異文化理解の先駆者たち

第6回 ラリー・E・スミス『違いに対処し、信頼関係を築くために』

リーダーシップは他者を導く能力ではなく、
リーダーとフォロワーが影響し合う力学的なプロセス

イースト・ウエスト・センターでは、本当に数多くのアジア太平洋地域のリーダーたちと共に働いてきました。そこで気づいたのは、それぞれのリーダーで「導き方」に違いがあることでした。励まし方、やる気の引き出し方、そして傷つけずに過ちを正す方法がリーダーによって異なるのです。人はどのように人を導いていくのだろうか? 私はリーダーシップに関心を持つようになり、この分野に精通したいと思うようになりました。

このリーダーに付いていこうと思う理由は何か? リーダー(指導者)であるためには、よきフォロワー(追随者)である必要はあるのか? 男性と女性の導き方は同じだろうか? マネジャーとリーダーは違うのか? 有能なリーダーになるためには、人に好かれる善人であるべきか? こういった疑問が生じるにつれて、私は人によって導き方がどのように異なるかをもっと知りたいと思うようになっていったのです。

1999(平成11)年、私はイースト・ウエスト・センターを退職し、リーダーシップに特化したコンサルタント会社を興しました。人は自分自身を導ければ、他人もうまく導けるようになる。私はこの信念を基に、「セルフ・リーダーシップ(Self-Leadership)」を前面に打ち出しました。

リーダーシップは4つの要素から構成されているというのが私の持論です。「リーダー」「フォロワー」「状況」「目的」です。まず、リーダーとは、フォロワーを伴う人物です。そして、リーダーシップは、地位でもなければ、他者を導く器量や能力でもありません。目的が定められている状況で、リーダーとフォロワーが影響し合う力学的なプロセスなのです。ほとんどの場合、目的は状況に応じて決まります。そして、状況と目的こそがリーダーとフォロワーを決定するのです。

リーダーとフォロワーはそれぞれの役割を高めるために、自分を鍛えることができます。そこで基本となるのが、「自分は誰か?」「どこにいるのか?」「なぜここにいるのか?」「どこへ行きたいのか?」「それはいつなのか?」という自分に対する5つの問いかけです。

自我(Self-identity)が何よりも重要なのです。 セルフ(self)という言葉は、個人だけでなく、共に働くグループやチームのメンバーとの関係性も含んでいます。セルフ・リーダーシップで最も大切な能力、それは状況の流れを理解する力だと言えるでしょう。(5/6)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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