異文化理解の先駆者たち

第8回 ネスター・カストロ『文化を学び、異文化をつなぐ懸け橋となる』

外国人教員との交流と異文化を再現した学習環境
人と環境の両面から学生の異文化理解を後押しする

昭和32(1957)年から日本人のための外国語教育に取り組んできた神田外語グループでは、創設当初から「言葉だけでなく、文化を学ばなければ外国人とは対等に付き合えない」ことを強調してきた。

実務的な英語を教える神田外語学院では、1970年代から外国人教員を大勢採用し、外国人と話し、その価値観に触れる機会を学生たちに提供してきた。また、カナダやアメリカでの海外語学研修も実施し、現地の人々との交流を通じて異文化を肌で感じ、外国語を習得する機会を設けてきた。一方で、外国人教員には演劇や書道などを通じて日本文化を学ぶことを促し、学生と教員の両方が文化を学ぶ環境を整えた。

特筆すべきは、当時から「文化こそが外国人とのコミュニケーションを拓く鍵である」という教育方針を打ち出していたことだ。神田外語学院のカリキュラムには「文学と教養」といった課目が盛り込まれ、日本人学生が日本文化を学ぶことを必修とした。前述の海外研修でも浴衣や柔道着などを持っていき、日本文化を紹介することで現地の人々とのコミュニケーションを促したのだ。

神田外語グループは、異文化理解の教育を追求するべく、昭和62(1987)年に神田外語大学を開学した。この大学は英語やスペイン語、韓国語、中国語といった外国語を専攻としながらも、異文化理解に関する科目が専門の必修単位としてカリキュラムに組み込まれた。さらに「異文化コミュニケーション研究所」と「日本研究所」が独自の予算を持った研究機関として設けられ、大学の枠を超えた研究活動や交流が行われた。

平成元(1989)年、神田外語大学ではELI(English Language Institute)を設けた。平成27(2015)年5月1日現在、ELIには63人の英語を母国語とする外国人教員が所属しており、学生はSACLA(Self-Access, Communication,Learner Autonomy)に設けられたELIラウンジに行けば、常駐する外国人教員と交流できるのだ。

神田外語グループは、平成6(1994)年には福島県に国際研修施設「ブリティッシュヒルズ」を設立。中世英国の村を再現した環境で、英語を母語とする外国人スタッフによるサービスや語学研修を受けられる施設を実現した。また、平成20(2008)年には神田外語大学にMULC(Multilingual Communication Center)を設立し、学生がアジアや中南米の建物を再現した環境で過ごせる施設を設けた。外国人との交流と異文化を体験できる環境。神田外語グループではこの両方を充実させ、日本における異文化理解教育の推進に挑戦してきた。(3/4)

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取材・文:山口剛

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