神田外語グループのいしずえを築いてきた人々

第14回 佐野隆治 学校法人佐野学園会長『大学生の本気を引き出す環境づくり』

文化コミュニケーションと日本文化の研究
学部名は「国際コミュニケーション学部」に決めた

神田外語学院が設立してから顧問をしていただいた小川芳男先生にも、「コミュニケーションの大学はいいだろう。単に外語大学を作ってもしょうがない。それなら学長に名を連ねるよ」とおっしゃっていただきました。

古田先生は講談社の辞典の編集をほぼ終えて、次の定職が決まっていなかったから、神田に「異文化コミュニケーション研究所」を作って、そこの所長になっていただいた。それも運ですよね。そして、古田先生は編集者としてものすごい幅広いネットワークをお持ちだったから、一般教育の先生方を集めることができた。新設の大学で、あれだけ興味深い研究をする教授陣を集られるなんて、普通はありえないことでしたね。もし、小川先生にお願いしただけだったら、神田外語大学は、東京外国語大学の出身者に頼りっぱなしの大学になってしまっていたでしょうね。

異文化の理解と同じくらい力を入れようと思ったのが日本文化の教育です。日本人として、日本の文化をきちんと紹介できなくちゃいけない。

学院の事務長をしていた頃、初めての海外の語学研修を企画しました。カナダのバンクーバーの大学です。夏だから、大学にはカナダの学生はいなくて、メキシコの学生が英語を学びに来ている。彼らは物怖じせずに活発に話すんですよ。すると、日本人は無口になる。これは、何かしなくちゃいけないと思いましたよね。

翌年、女の子には盆踊りの浴衣、男の子には柔道着を持たせました。折り紙と書道のイベントをやって、カナダ人の名前を当て字の漢字で書いてあげた。大成功ですよ。仲良くなって、その日のうちに片言でも英語をしゃべる。外国人とコミュニケーションするうえで、文化は強い。そう実感しましたね。そのためには、学生に日本文化の勉強をさせなくちゃいけない。

そんな経験もあったから、大学では語学だけでなく、文化教育にも力を入れようと思ったんですよ。異文化コミュニケーションと日本文化の研究だから、じゃあ、新しい大学の学部名は「国際コミュニケーション学部」にしようと決めた。

文部省に通って、「異文化コミュニケーションの大学を創りたい」って何度も説明しました。高等教育局の大学設置室の担当官は理解してくれた。でも、大学の設置を検討する審議会の委員は、学者の方々なんですよ。学者に説明するのは、我々ではなく、大学設置室の担当官です。当時は、異文化コミュニケーションは学会もなかった。結局、「国際コミュニケーション学部というのを取り下げて、外国語学部にしてほしい」と言われたんですよ。小川芳男先生が学長で、外国語学部なら委員からも難しい質問をされずにすむから、と担当官たちは言うんです。結局、外国語学部で申請をすることになりました。(3/8)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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