神田外語グループのいしずえを築いてきた人々

第14回 佐野隆治 学校法人佐野学園会長『大学生の本気を引き出す環境づくり』

真のコミュニケーションをするには
ひとりの人間としての独立心が必要です

昭和61(1986)年の末に大学設置の許可が下りて、昭和62(1987)年4月には神田外語大学が開学しました。

開学時の建物は、1号館から3号館まで。あとの土地にはアシがぼうぼうと生えていましたよ。1号館のエントランスには、池田弘一先生に「言葉は世界をつなぐ平和の礎」と大きく書いていただいて、それで壁を作った。学院は2年教育ですから言葉を学んで精一杯。大学は4年間だから文化の指導もできる。4年間、ぶれずに学び続けるには、建学の理念を明確にしておかないといけない。大学に新しい職員や教員がたくさん入ってきても、考え方がぶれないようにするために、大学の事務局にも学院のベテランの職員を送り込んだ。そこをしっかり握っておかないと、「神田外語」ではなくなってしまいますからね。

大学では、開学してからも文化の教育には力を入れました。その中心となるのが研究所です。異文化コミュニケーション研究所と日本研究所、そして言語学研究所。この三つが大学の柱です。

日本研究所の所長は大学で日本倫理思想史を担当していた窪田高明先生。それと、池田弘一先生。池田先生は、神田外語学院が予備校をしていた昭和30年代から国語の講師をしていただいて、それからずっと日本文化を学生たちに教えてくださっています。池田先生は江戸文化を体現されている方で、小唄端唄が唄えて、落語もできるし、書も書ける。日本文化を研究されている方は多いけど、池田先生のようにご自分の芸能と話で学生を感動させられる方は少ない。文化の教員は、学生に教えるのが仕事だから、いい論文を書いているかなんて関係ないんですよ。

開学の3年目にスタートしたのがELI(English Language Institute)。フランシス・ジョンソン先生にお願いしました。ジョンソン先生は自立学習の考え方を提唱されていた。日本人の先生は教えたがるんですよ。学生は真面目に学んで安心する。でも、それじゃあ真の語学力なんて身に付かない。真のコミュニケーションには、ひとりの人間としての独立心が必要です。だから、ジョンソン先生から自立学習の考え方を聞いたときは、これだって思ったし、ELIを定着せるのにできる限り応援した。新しいことをやると風当たりが強い。よほど強く守ってあげないと定着せずに、つぶれちゃいますからね。

ELIを作ったのは、うちの大学にしかないものを作る必要があったからです。昭和30年代に神田外語学院を作ったとき、すでに英会話学校というのはありましたから、そこと戦うには特徴が必要だったんです。だから、外国人教員を採用したり、視聴覚設備に力を入れた。それと同じで、他の大学と戦うために、外国語大学として何か新しいことをやらなくちゃならなかった。ELIはその武器のひとつだったんです。(4/8)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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