本物の英国文化を体現させるために

第6回 川田雄基ブリティッシュヒルズ名誉館長『本物の英国があることに誇りを持つ』

考古学者たちはなぜ福島県から
英国そのものが出てきたのか不思議に思うだろう。

英国大使館とのお付き合いにも力を入れてきました。会議室には歴代の英国大使の写真を飾り、「アンバサダーズ・ホール」としました。実際の英国大使館では、歴代の大使の写真は、小さな写真が事務室と大使室の間の裏階段の壁に飾られているだけです。だから、ここを訪れる大使の方々には、「大使館よりも、ブリティッシュヒルズのほうが、ずっと居心地がいいですよ」とお伝えしています。

これだけ英国の文化を理解する活動をしているので、英国大使館とも何か一緒にできないかということになり、ゴルフのコンペティションを開くことになりました。こちらですべて準備を整えて、英国大使館にお願いをして、「ザ・ブリティッシュ・アンバサダーズ・カップ」が実現しました。それとは別に、英国市場協議会にも協力してもらってゴルフコンペを行った。英国と日本の交易を盛んにすることを目的とした団体です。そうやって、英国大使夫妻が年に2度、ブリティッシュヒルズに来られるようになったのです。レセプションで、大使が"Thank you very much for coming."なんて挨拶すると、ブリティッシュヒルズは、一瞬にして英国領のようになってしまいましたね。

思い出深い人物は、ブリティッシュヒルズのオープン当時に英国大使をされていたジョン・ボイド卿です。最近は英国大使と言えども、ゴルフをやらない方もある。ボイド卿も、もともと学者で、ゴルフはなさらない。それでも、アンバサダーズ・カップでは、最初のオーナーショットだけは、ばっちり飛ばして、みんながうやうやしく拍手をする。お辞儀をして、引き上げてきたところに、私がジープで待っていて、彼を連れ出した。ボイド卿はリバーフィッシングが大好きだから、川に釣りに行っちゃったわけです。

でも、まったく釣れなかった。前の日が台風で、川の魚たちはみんな沈んで川面に出てこない。しょうがないから、近くの料理屋に行って、板前さんに頼んで川魚を出してもらった。炉端に串の魚を並べてね。ボイド卿は、「お前、気が利くな」と喜んでらっしゃった。食事をして、そろそろ帰ろうとしたとき、ボイド卿は、「今度私が来るまでに魚たちに英語を教えておいてくれないか。私が『出てこい!』と英語で言ったら、みんな出てくるようにね」とジョークをおっしゃった。知的で、ユーモアのある方でしたね。

ボイド卿は大使を辞めて外交畑を退かれてからは、大学のカレッジマスターになり、大英博物館の理事長に就任された。そのボイド卿との思い出で、もうひとつ印象的だったのは、ブリティッシュヒルズのオープン直後の視察にいらっしゃったときの言葉です。

「もし、この施設が大地震で埋まった後、3世紀も経ってから発掘されたら、考古学者たちはなぜ福島県から英国そのものが出てきたのか不思議に思うだろう」

実に学者らしいジョークです。今だに忘れられませんね。

ブリティッシュヒルズは、とにかく凝りに凝ってつくった。ケルトの十字架まで、野仏のように雑木林の中にさりげなく置いた。そんなこだわりの積み重ねが認められたことは嬉しかったですね。(6/7)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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