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50th Anniversary -Interviews-
異文研では、「研究」にも力を入れていきました。「日本の大学におけるコミュニケーション教育に関する調査」「青年海外協力隊調査研究」「帰国子女の日本社会への適応研究」など、さまざまなテーマが設けられました。活動を続けるうえで大きかったのは研究所の予算です。学部から独立した機関として、独自の予算を組んでもらっていたので、遠方の研究者が幕張に来る交通費を支給し、大学の宿泊施設も利用できました。当時は、みんな手弁当でも共同研究をしようと燃えていたから、そのサポートは大きな後押しになりましたね。
研究会のひとつが「異文化コミュニケーションキーワードの体系化に関する研究会」です。2年間にわたって、7人の研究者が集まり、20回以上の研究会を実施しました。約1400に及ぶ異文化コミュニケーションに関するキーワードを集め、整理し、体系化していきました。その成果は、平成8(1996)年に報告書としてまとめるとともに、平成9(1997)年に出版された『異文化コミュニケーション・ハンドブック 基礎知識から応用・実践まで』(有斐閣)にも反映されました。こうして、研究活動から出版という「啓蒙」へも広がっていったのです。
話は前後しますが、神田外語大学が開学した昭和62(1987)年に、『異文化コミュニケーション 新・国際人への条件』(有斐閣)が出版されました。古田先生が監修し、石井敏先生、岡部朗一先生、そして私が執筆した共著書です。異文化コミュニケーションの理論を体系立ててまとめた本であり、この分野では日本で初めてのテキストブックと言ってよいでしょう。この本は、多くの大学で使われるようになりました。経済や法学の事典を出版する有斐閣が異文化コミュニケーションという新しい学問を取り上げたことも画期的でした。その後、同社からはこの分野の専門書が数多く出版されました。
平成25(2013)年、『異文化コミュニケーション事典』が出版されました。石井先生と私が編集代表を務め、総勢155人の研究者が参加した、異文化コミュニケーションに関する総合事典です。このような事典はアメリカでも前例がありません。この事典の元になったのが、先ほど述べた異文研でのキーワードに関する研究プロジェクトです。1990年代に幕張の神田外語大学に数多くの研究者が集い、熱い議論を交わした異文研の活動内容は今もきちんと受け継がれているのです。 (7/9)