? Interviews いしずゑを築く~異文化理解教育の先駆者たち~

異文化理解教育の先駆者たち

第2回 久米昭元立教大学特任教授『かつてない活動を展開し続けた異文研』

2泊3日の宿泊型研修で
参加者の交流を図った夏期セミナー

異文研では、啓蒙活動として、ニュースレターや紀要『異文化コミュニケーション研究』の発行に加えて「異文研夏期セミナー」を開催していました。

私がまだ、神戸市外国語大学で教えていた昭和61(1986)年の夏、スタンフォード大学で行われた異文化コミュニケーションに関するセミナーに参加しました。SIIC(Stanford Institute for Intercultural Communication)です。異文化コミュニケーション分野のビジネスコンサルタントとして活躍されているクリフォード・クラーク氏が立ち上げたセミナーです。

このセミナーの参加者は研修だけでなく、プライベートな時間も共有しました。食事をともにして、余暇も一緒に楽しむ。研修もさることながら、そういった時間が文化背景の異なる者同士の人間理解には役立つのだと実感しました。

神田外語大学が開学し、異文研の活動が盛んになっていったころ、異文化コミュニケーション論をカリキュラムに加える大学が少しずつ増え始めていきました。ある学会に出席された古田先生は、他大学の教員たちが異文化コミュニケーションの授業をうまくできていないことを実感され、「それならば神田外語が研修をやりましょう」と宣言されました。

古田先生から研修会の実施を相談された私は、真っ先にスタンフォード大学でのセミナーを思い出し、泊まりがけで交流を深められるようなものにしようと考えました。こうして2泊3日の「異文研夏期セミナー」が平成3(1991)年にスタートしたのです。セミナーでは、神田外語大学で異文化コミュニケーション科目を担当していた教員が中心となって、授業内容を参加者に開示していきました。こういった内容のセミナーも当時ではありえなかったですね。

平成7(1995)年からは福島にあるブリティッシュヒルズに会場を移しました。研修の空き時間にはテニスやビリヤードで交流を深めました。全国から参加者が集まり、人数も最初は25人ほどでしたが最大で70人ぐらいにまで増えていきました。夏期セミナーの参加者が中心となって、新たに「多文化関係学会」が平成7(1995)年に誕生しました。初代会長には、神田外語大学の学長を務められていた石井米雄先生に就任していただきました。(8/9)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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