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異文化コミュニケーションの実践において最も重要なのは、衝突を解消する能力であると、フォンティンは指摘する。文化の違いは、とても根深いものであり、衝突は避けられない。解決しようとして、問題が悪化することもある。だからこそ諦めずに交流を続けることが重要だと語る。そして、どちらかの文化に合わせるのではなく、第三の文化を構築する。文化の違う人々が共通の目的を達成する会社や組織では、もうひとつの文化を構築する必要があるのだ。
インタビューの最後に、フォンティンは日本社会に関してこんな指摘をしてくれた。 「日本は今後、異質を受け入れ、多文化へ対応できるようになるべきです。経済的にも、人口統計学的にも日本の生態系は大きく変化しています。高齢化が進む日本が世界での競争力を保つには、重要な仕事を日本人ではない人々に任せなければなりません。日本企業がそういった人材を獲得し、雇用し続け、忠誠心を持ち続けてもらうには、日本人と変わらない条件で扱い、『日本企業は完璧なパートナーである』と感じてもらえなければなりません。
多様な文化との交流は若いうちから始めるのがよいでしょう。日本の学校と外国人の子どもたちが通う学校の交流を始めればいい。交流を支援するオリエンテーションやトレーニングと組み合わせてもよい。若い世代が適応方法を学ぶことは、日本の多様性への対応力を高めていく有効な手段だと私は考えます」
神田外語グループでは約60年間にわたり、異文化理解教育を実践と理論の両面から追求し、高等教育機関や関連する施設を具現化してきた。その取り組みによって育てようとした人材とは何か? それは、諸外国の人々と対等に渡り合える人間性や教養、語学力を兼ね備え、相手と共生するバランス感覚を持ちながら、フォンティンの言う「第三の文化」を育める日本人なのだ。神田外語グループの使命は、異文化理解能力の高い人間を育成し、フォンティンの指摘する「日本人が実現すべき多文化社会」の実現に寄与することだと言えるだろう。(4/4)
ゲイリー・M・フォンティン(Gary M. Fontaine)
昭和21(1946)年生まれ。ウエスタン・オーストラリア大学で社会心理学博士号を取得。昭和54(1979)年、ハワイの行動科学研究所のディレクターに就任し、同僚たちとともに異文化適応のトレーニングを実践。昭和57(1982)年、ハワイ大学コミュニケーション学部教授に就任し、以来、異文化コミュニケーションの研究、教育、研修に情熱を傾け続けた。平成24(2012)年、同大学の名誉教授に就任。現在は拠点をフィリピンのボラカイ島とアメリカ・シアトル近郊のマーサー島に移し、インターネットで世界の研究者と連携しながら研究と執筆を続けている。