神田外語グループのいしずえを築いてきた人々

第3回 フランシス・C・ジョンソン神田外語大学名誉教授『ELIのカリキュラムは進化する』

学生たちが教室とSALCの間を行き来する。
それこそが神田外大における英語学習のかたちです。

佐野隆治会長は、ELIが開発した神田アプローチを支援してくれました。この方法論が、神田外語大学を他の大学とは違うものにする重要なものであると感じられたのでしょう。学生は、神田外語が他の大学とは違うからこそ来たがるのであり、だからこそ私たちは魅力的でなければならない、というのが彼の持論でした。何か新しいもの、佐野会長はそれを好みましたね。

佐野会長は経営者として、大学の経営を安定させるために数多くの学生が入学することを望んでいました。一方、私は教育者として、たくさんの学生が入学し、自分たちの開発したアプローチで成果を上げることを目指していました。それゆえ、私はELIに情熱を注ぎ、佐野会長はELIを支援してくれました。そう、私と佐野会長は、理由は異なりますが、学生を数多く集めたいという目標を共有していたのです。

ELIの語学教育は年を追うごとに発展していきました。4号館にあった2つの教室の壁を取り払って、ひとつの大きな教室にして、そこに自立学習センターを作りました。これが現在のSALC(セルフ アクセス ラーニング センター)に発展していくのです。

平成15(2003)年には、新しい建物であるSACLA(自立型学習支援施設)が完成しました。学生たちはSALCで学ぶ機会が増え、教室とSALCの間につながりが生まれました。学生たちが教室とSALCを行き来しながら学ぶ。それこそが、神田外語大学における英語学習のかたちです。4つの壁に囲まれた教室という空間だけが学びの場ではありません。教室はもっともっと広い学びの場の一部にしか過ぎないのです。

現在では、崇城大学(熊本)や広島文教女子大学といった他大学にもSALCの方法論がソリューションとして提供されています。崇城大学は工学や薬学が中心であり、学生たちは神田外語の学生ほど英語を学ぶことには熱心ではありません。しかし、コミュニケーションを中心に置く神田アプローチによって、崇城大学の学生たちは英語を学ぶことに熱中し、彼らの語学能力は上達しているのです。

SALCがスタートしたときから、ある議論があります。それはSALCでの学習を必修科目にするかどうかという議論です。SALCは神田外語大学の中心的なプラットフォームとして、重要性が高まっています。では、SALCへ行くかどうかの判断は学生に任せるべきなのでしょうか?学生の好き嫌いに任せずに必修科目にすべきだという意見もあります。しかし一方で、あくまで学生の自主性を尊重して、教員はSALCへ行くように促すだけにしたほうがよいという意見もあります。これはジレンマです。私にもどうすればよいか分かりません。

神田外語大学はもっともっと柔軟性を高められると私は思います。神田アプローチのゴールは、英語学習が学生1人ひとりに合わせた仕様となることです。私たちはまだ、クラスという概念に縛られています。1クラス30人の学生は、決められた時間に、決められた場所に集まり、学ばなければなりません。その必要はあるのでしょうか?入学試験もいつでも受けられるようにすべきです。受験する準備が整ったらSALCで入学試験を受けて、合格したら翌週から通い始めればよいのです。教育のシステム、そしてカリキュラムは、そういった柔軟性を持つべきです。まだ考える余地はあるのです。

ただ、私たちには文部科学省の規則という制約があります。文科省は30人の学生を1人の教員が教える場合にのみ、補助金を交付します。補助金をもらうには、現在のかたちのクラスにするしかないのです。ですから、英語教育の柔軟性を高めるには、文部科学省も変わる必要がある。それが大きな課題です。(5/6)

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取材・文:山口剛

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