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50th Anniversary -Interviews-
宿泊棟は8棟あるんですが、それぞれの時代設定と建築様式を変えました。すべて同じだと不自然なんです。というのは、歴史のある村なら、時代を追うごとに建物が建っていくでしょう。古い建物もあれば、新しい建物もある。そのほうが自然なんです。ひとつの時代の建築様式に揃えちゃうと、「わざわざ作りました」ってことになってしまうんです。
建物のイメージは決まった。そこで、日本の建設会社に連絡をして、スケッチを描かせたら、これが問題にならない。まるでダメ。やっぱり日本人にはできないんです。じゃあ、本場でやってもらおうということで、イギリスのボーダーオークという設計事務所にコンタクトした。マナーハウスや歴史的な建物、景観づくりを得意とする会社です。家具や内装に関してもアドバイスをしてくれる。これで設計はイギリス、施工は日本の会社という体制が整いました。
一番怖かったのは、「似て非なるもの」を作ってしまうことなんですよ。外国の映画で日本の家が出てくる場面があるじゃないですか。どこかおかしいでしょ。中国だか、韓国だか、日本だか分からない。西洋人には分からなくても、日本人には分かる。違和感がある。文化がきちんと理解されていないのは、嫌な感じを覚えるじゃないですか。イギリス人が見て違和感を覚えるようなものは創りたくなかったから、建築物の設計はイギリスの会社に依頼したんです。
工事が始まると、イギリスから大工さんたちが技術指導に来てくれましてね。やっぱり独特の技術が必要です。日本の大工さんたちは器用だからコツをつかんでしまえばあとは大丈夫。それにしても、職人同士というのは、言葉が通じなくてもいいんですね。大工さんは訛の強い英語を話すし、日本の職人は英語なんて分からない。それでも問題なくコミュニケーションして、仕事が進んでいく。それぞれ技とプライドがあるから通じ合える。ああ、これが本当の異文化コミュニケーションというものなんだなと思いましたよ。(3/8)