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50th Anniversary -Interviews-
昔、骨董の鑑定士をされている方の本を読んだことがありましてね。その方は、三井などの名家に出入りしている骨董屋に丁稚奉公に入った。小僧として、色んな手伝いをしているうちに、上等な骨董に触れる機会にも恵まれた。本の中で、その方は「本物は見た目では分からない。触ってみて、初めて分かる」とお書きになっていた。
我々が海外のお城なんかに行っても、ロープが張ってあって、「ここからは入らないでください」と言われる。触っちゃいけない。座っちゃいけない。でも、それだとテレビを観ているのと変わりないじゃないですか。
実際に100年前の椅子に座って、その時代の本を開いてみれば、日本との違い、文化の違いが分かるような気がするんです。特に、若い子たちにはそういうものを感じさせたい。日本人はどちらかと言うと、おしゃべりではない。外国に行って文化や環境が違うと萎縮して話せなくなっちゃう。でも、ブリティッシュヒルズで本物を体験しておけば、「なんだ、福島の研修所にあったのと同じじゃないか」と気楽になる。緊張が解ければ、話せるようになるんですよ。それが大切だと思って、とにかく本物にこだわったんですよ。
ただ、家具などの調度を揃えるのには本当に手間ひまかかりましたね。マナーハウスにしても、同じ時代の調度でなければならない。運良く、その時代のアンティークの建材に出会ったとしても、必要な数が揃わなければ意味がない。左右対称の空間でデザインの違う調度を使っていたら変ですからね。数が揃わなければ、結局作らせるしかない。資料を見ながら、ここにはこれがあるべきだ、ここにはこれが必要だと議論しながら、イギリスの会社に発注していきました。
そんな作業を続けていると、さすがに文化も理解できるんですよ。マナーハウスには中国風の大きな器も置いてある。当時、イギリスは中国との交易があったから、上流階級の家にはそういう異国趣味の品々があった。2階に上がったところの絨毯も同じように中東との交易の証です。絨毯は中東の風土に適しているんです。日本と違って砂地ですから、絨毯が靴の裏の砂が入り込んでも、砂は叩けば落ちる。そんなことも学びましたね。(5/8)