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平成19(2007)年5月から、東京・神田の佐野学園本部ビルで理事長室次長として勤務し始めました。最初の1年間は銀行からの出向という立場で、人事制度を整えました。いよいよ佐野学園へ転籍するというタイミングで、佐野隆治理事長から「神田外語学院の3号館を教育施設に改装しようと考えている。プロジェクトリーダーをやってくれ」と指示されました。
千葉・幕張の神田外語大学では平成13(2001)年に「自立学習者」という概念に基づいた学生への教育支援を開始していました。平成15(2003)年には自立学習施設「SALC(Self-Access Learning Center)」が完成し、文部科学省の「特色ある大学教育プログラム(特色GP)」に採択されるなど実績を上げていました。
神田外語学院でも自立学習施設を設けていましたが、あまり機能していなかったようです。私が佐野隆治理事長から自立学習施設の新設を指示された平成20(2008)年の入学者は705人。過去最低まで落ち込んでいました。佐野隆治理事長は新たな教育施設によって、神田外語学院の魅力を高めたいと考えたのかもしれません。
佐野隆治理事長には、「大学に作ったSALCを参考にして、それ以上のものを作れ。教育に関するもので業績を残すことで、お前の地位が安定する」と告げられました。大変なことだ、と思いましたが、すでに銀行から佐野学園へ転籍してしまっていたので、やらざるを得ません。
佐野隆治理事長からの期待も感じていました。新しい施設を作るには、「英語教育施設はこうあるべき」という先入観がなく、部下を使いながらプロジェクトを動かせるリーダーが必要だと考えたのでしょう。佐野隆治理事長は、門外漢の私に、教育施設づくりに熱意がある3人の若手職員を部下として付けてくれました。神田外語大学のSALCを見学するとともに、そのコンセプトを考えたイギリス人研究者、ルーシー・クッカーにもヒアリングをしました。若手職員たちは言語学的な見地や実践的な視点からアイデアを出してプランを練ってくれました。
プロジェクトのトップである私の役割は、優秀な若手職員からの要望をまとめて稟議書に仕立てることです。稟議書を書くのは得意ですからね。そして、新施設づくりに私とは考えの異なるさまざまな考えを持つ教職員に話を通す。かなりの軋轢(あつれき)はありましたが、トップである佐野隆治理事長の了解を取りつつ、私たちプロジェクトメンバーの考えを貫き、こちらも折れるところは折れながら、自立型言語学習施設「VISTA(Village of Innovative Study and Training Access)」を平成21(2009)年に完成させたのです。