神田外語グループのいしずえを築いてきた人々

第25回 糟谷幸徳神田外語学院第7代学院長 社会の「今」に必要とされる専門学校を追究する

学院生たちのやる気を
TOEICの成功体験で高める

平成24(2012)年4月、私は神田外語学院の学院長に就任しました。学院の入学者数はリーマンショックを境に増加傾向に転じ、令和元(2019)年には2000年代では最も多い1368人まで増加していきます。2学年合わせると約2400人の学生が在籍していたのです。近年では最多の学生数です。

専門学校が入学者を獲得するための王道は出口の実績を上げることです。就職や編入学で優れた実績を上げ、それを効果的に周知していくことに尽きます。

では、その実績を上げるにはどうすればよいか。神田外語学院は長年、「就職の神田外語」といわれるほど高い就職実績を誇ってきました。歴史もあるし、数多くの企業とのネットワークもある。だからこそ、採用する企業としては、「神田外語の卒業生だから英語はできるんでしょ?」と英語の実力を問う。そして、就職活動で学院の学生たちが競うのは、大学生や専門学校生です。大学生のTOEIC平均点は550点ほどなので、700点を取れれば間違いなく武器になります。

2000年代終わり、神田外語学院は学生が勉強する雰囲気ではなかったと思います。これを変えるには、勉強による成功体験を積ませないといけない。私はTOEICを利用することにしました。TOEICの点数上位者、そして学科のクラスごとの平均点を学校の壁に張り出したのです。当初は教員の反感もあったし、外国人教員は「TOEICって何?」という認識でしかありませんでした。

とはいえ、学生はTOEICの点数が上がればうれしいし、友達に負ければ悔しい。負けたくない気持ちは、どんな学生にだってある。張り出された点数を見れば、自分がどの位置にいるかが明確に分かる。先生方も次第に点数を上げることに前向きになり、一生懸命教えるようになっていきました。そして、頑張って英語を勉強した学生が、希望の就職や編入学を果たして結果につながる。次第に学院には勉強する雰囲気が高まり、「学校に来て真面目に勉強すれば良いことがある」と実感できるようになった。この雰囲気をつくるまでに5年はかかりました。

この雰囲気をつくれたのは、教育部門のトップだった教務センター長の長谷川貢さんと互いに協力ができたからです。私は最大限に長谷川さんをリスペクトしたし、長谷川さんも自由に教育をやらせてもらえるから私をリスペクトしてくれました。教員の要望には反対せずに、その代わりに「TOEICはきちんと結果を出してほしい」とこちらも要望を出す。現場の教員に対して何か要望があるときは、長谷川さんを通じて言ってもらう。長谷川さんが言ってくれると、みんな理解しますからね。経営と教育の両輪がかみ合ったことが学院の成長の原動力でした。

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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