神田外語グループのいしずえを築いてきた人々

第25回 糟谷幸徳神田外語学院第7代学院長 社会の「今」に必要とされる専門学校を追究する

入学式保護者会のスピーチで任されたのは
震災1カ月後の福島研修決行を伝えること

神田外語学院の副学院長になって2年目の平成23(2011)年4月の入学式、式典の後の保護者会で佐野隆治会長から学院を代表してスピーチをするように指示されました。佐野隆治会長はスピーチに厳しい方でした。聞き手を引き付けるスピーチでないとひどくお怒りになる。私も伝える力を試されていたのでしょう。

入学式の約1カ月前の3月11日、東日本大震災が起きていました。東京電力福島第一原子力発電所で事故が起き、東北から関東にかけて放射能汚染による健康への影響が懸念されていました。

神田外語学院では例年、入学直後に新入生オリエンテーションを行っています。会場は、神田外語グループの国際研修施設「ブリティッシュヒルズ」であり、場所は福島県天栄村です。この宿泊形式のオリエンテーションは、学生生活が2年しかない神田外語学院生にとって、寝食を共にしながら友人をつくる貴重な機会です。だから、佐野学園の経営陣は予定通り実施すると決めていました。

しかし、ブリティッシュヒルズがあるのは福島。保護者が懸念するのは見えています。私の役目は、その決行を目の前にいる保護者に伝えることだったのです。

私はまず、ブリティッシュヒルズでは放射能の影響がないことを伝えました。そして、「このオリエンテーションで仲間づくりができるかが、2年間の学業を全うできるかどうかに影響するぐらい重要であることを理解してほしい」と丁寧に熱意を込めて話しました。保護者会では、反対の意見が上がることはありませんでした。しかし、翌日以降は保護者から学院にバンバン電話がかかってきて、「子どもの命をどう考えているんだ!」という怒りのご意見をいただきました。

私の役目は佐野隆治会長が決めたことを実行することです。佐野隆治会長は誰よりも深く考えているし、トップとして決めるときには決める。だから私は、学院の方針を保護者に丁寧に説明しました。それでも基礎疾患や精神的な不安で参加できない学生もいます。その学生を見捨てないために、帝国ホテルでの研修という代案を用意したのです。宿泊はしませんが、学生たちは食事を共にできます。

当時、帝国ホテルで顧問を務められていた藤居寛さんは第一勧業銀行時代の上司でしたから、「新入生たちが絆を深める食事会をするので、とびきりのローストビーフを用意してください!」とお願いしました。結果として、40人ほどの新入生が帝国ホテルでのオリエンテーションに参加し、数百人に上る学生がブリティッシュヒルズ合宿に参加できました。

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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