神田外語グループのいしずえを築いてきた人々

第18回 赤澤正人神田外語大学第4代学長『国際舞台を目指す学生に道を示す』

学生たちの鋭い感性でアンテナをはれば
英語にしかない表現をキャッチできる

幸い、私には外交官としての経験がありましたから、外務省の英語とは何かを実体験として話すことができました。

外務省の文書や国際会議では格調の高い英語が求められます。入省すると英文で文書を書く訓練もします。例えば、日本の総理大臣からアメリカの大統領への書簡を作成する。まずは直属の上司が確認して、さらに課長、局長が内容をチェックしていく。最終的には英語そのものを確認する専門家がいる。書類が私の手元に帰ってくるときには、ペンで真っ赤になっています。

「富士山のまわりに雲がたなびいています」という文章があるとします。私だったら、“Mt. Fuji is surrounded by clouds.”と訳すでしょう。でも、外務省の英語の専門官は、“Mt. Fuji is enveloped in clouds.”と訳すのです。我々は“envelop”は「封筒」と教わっているからこういう使い方はできない。でも、英語には“enveloped in flames”で「炎に包まれる」という表現がある。そんな例を挙げながら、学生たちには、外務省では格調の高い文章が書けて、使えなくてはならないことを伝えていきました。

表現を豊かにするためには、新聞や雑誌、論文、小説など、とにかくたくさんの分野の英語を読まなくてはなりません。ELIの先生と話すときも、先生方が使っているネイティブの表現で、自分の知らないものに敏感になる。せっかく先生がそういった表現を使っているのに、自分が敏感になっていなければ素通りしてしまいます。アンテナをはっていれば、キャッチできます。若者だからその感性は鋭い。英語らしい表現、英語にしかない表現をどんどん吸収していけば、次第に自分もそういった英語を自分で使えるようになります。

学生には、語学だけでなく、社会や世界の動きにも関心を持ってもらいたかったので、外務省時代の知人にも大学の行事に参加してもらいました。平成19(2007)年の大学創立20周年事業では、国際関係で活躍している外務省出身の岡本行夫さんと田中均さんに講演していただきました。岡本さんは私の同期で、田中さんは私の一期下。戦略と行動力のある田中さんは小泉首相の北朝鮮訪問に尽力をした人物です。現実の外交がどう動いているか、生の声を聞かせることができて、学生たちにも刺激になりました。(6/10)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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