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50th Anniversary -Interviews-
公平性を追求した1年目の入学試験だったが、佐藤徹には苦い経験があった。
「志願者募集を締め切った翌日、1本の電話がありました。受験生のお母さんでしたが、『自分の手違いで娘の願書を出し忘れてしまった。なんとか受験させてもらえないだろうか』と泣いて頼まれました。受験生自身のミスではないし、1人増えたぐらいでは大きな影響はありません。でも、私はお断りしました。とにかく厳正と公平にこだわってしまった。職員たちが私の対応を見ていたから、それも意識したのでしょう。今思えば、すまないことをしたと思います」
試験の結果が出ると合格通知を何人まで出すかを検討する。この作業は、佐藤と佐野隆治の2人だけで行った。受験者の名前、出身高校、点数がすべて印字された書類を見ながら、どこまで合格通知を発送するかを決めていったのである。文部省は定員の3割増までなら適正な学生数であると判断し、補助金を支給する。しかし、それを超えると補助金は支給されないのだ。
こればかりは他大学のやり方など参考にはならない。注目したのは受験生の出身高校である。合格ラインにいる受験生一人ひとりの高校のレベルを検証しながら、どの受験生が神田外語大学に入学するかを推測していった。結果として、合格通知を出した約6割が入学し、定員の3割増のラインは維持できた。
この合格者ラインの作業でも、佐藤には苦い思い出がある。開学から数年が経ち、合格ラインの設定も慣れてきた。当初は理事長の佐野との共同作業だったが、佐野の負担を減らそうと配慮し自分ひとりで担うようになった。しかし、平成9(1997)年2月の判定では入学者が定員の5割増に達してしまったのである。もちろん、文部省からの補助金、2億円もゼロである。
「まったくのケアレスミスです。合格者が5割増になったことで、予定していたクラス数や1クラスの定員を急遽、増員しました。そして、何よりも文部省からの補助金がゼロになってしまったのです。正直言ってクビを覚悟しました。教授会でも大問題になりましたが、佐野(隆治)理事長は『超過した人数分を考えれば、財務的にはかえってプラスになる』と不問に付してくれました。全面的に支援してくれた佐野理事長には、今でも感謝しています」(5/8)