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50th Anniversary -Interviews-
佐野きく枝先生は、とても頭のよい方でした。人を見る目がありました。そして、学院長だった佐野公一先生のよき相棒でしたね。あるとき、学院のエレベーターに乗っていると、外国人の女性教員が真っ赤な口紅をしていました。すると、公一先生はその場で教員を怒鳴りつけるんです。きく枝先生は、そんな公一先生を「まぁ、まぁ」となだめて、その女性教員には公一先生が怒鳴った理由をきちんと説明されていました。非常によいコンビでしたね。
言葉を学び、文化を学ぶ。バイリンガルになって、相手の文化から物事を見られるようになる。佐野公一先生、きく枝先生は、とにかく真剣に、学生たちにその力を身につけさせようとしていました。
おふたりは終戦後、進駐軍が日本に入ってきたときに、「日本人は英語を勉強しなくちゃいけない」と強く感じられたようです。戦時中、日本は敵国の言葉である英語を学ぶことを禁止しました。一方のアメリカは日本人を集めて日本軍の暗号解読をさせた。大きな違いです。公一先生は日本が強くなるためには、外国の言葉と文化を学ばなくてはいけないと思われていたのでしょう。
もうひとつ、神田外語との大きな出来事は、佐野公一先生と雑誌『中央公論』で対談させていただいたことです。公一先生は対談のなかで、「教育には『波長』を合わせることが大切だ」と力説されていた。私も同感でした。コミュニケーションの本質です。大学の授業でも、教員が学生と真剣勝負で向かい合って、波長を通じ合わさなければ真の教育はできません。
「波長を合わせる」というのは異文化コミュニケーションの本質です。英語で “Cultural Empathy”という言葉があります。アメリカ人と話すときは、アメリカの文化に入り、その文化的習慣から物事を考え、コミュニケーションをしていきます。文化的な共感ですね。ビジネスの現場でも大切です。日本人のマネジャーは、現地のスタッフとうまくいかないときに、すぐに「日本では」とか「日本人の場合は」と言ってしまう。でも、相手はアメリカ人。両者のズレを修正しなければ、いつまで経ってもコミュニケーションは成立しないのです。(5/8)