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50th Anniversary -Interviews-
大学開学の前年の大仕事のひとつは入試問題の作成です。小川先生が入試作成のために招集したのは、異文化コミュニケーション研究所所長の古田暁先生、英米語学科の久泉鶴雄先生と原岡笙子先生、そして私です。久泉先生と原岡先生は教育大学の出身だから総合的に英語を教える視点をお持ちだったし、古田先生は異文化理解の視点や総合的な教育の視点を持っていました。そして私は、文部省で4技能による総合的な英語指導を推進してきた。ですから、参加したメンバーは小川先生の考える「総合的な英語学習」についての方向性を共有していたと思います。
このメンバーによって作成した英語の試験問題の大きな特徴のひとつは、90分の英語の試験問題の中で、30分をリスニングの問題に充てたことです。これだけ長い時間をリスニングに充てたのは全国の大学でも初めてでした。
それと読解問題でも内容を重視しました。私は文部省時代に学習指導要領に関わっていましたが、「いくら話すことができても、話す内容がなければ意味がない」と主張してきました。話す内容を培うこと、つまりある考え方を作り出す力は読むことによって育まれます。ですから、入試試験でも時事問題を多く取り入れました。これは、他の大学とは違う。多くの大学では文学作品から文章を引用することが多かった。極端に言えば、「高校の英語指導で時事問題を取り上げなければ、神田外語には入れないぞ」という主張があった。読解問題でも総合的な英語指導への主張を反映していったのです。
あとは面接ですね。これも小川先生の信念によるものでした。ずいぶんと反対もあったんですよ。面接は行うのが大変な割には、合格・不合格にはあまり影響が出ない。ですが、小川先生には強い意思がありました。「面接をやるということは、受験生がその自覚を持って来ているはずです。勉強だけでなく、人間性や物事の考え方、人柄も大切であることを受験生が意識することが大切です」とおっしゃっていました。私も大賛成でした。確かに10分ぐらいの面接で、人間性が分かるはずはありません。でも、受験生もきっと準備しているし、そのことそのものが大切なんです。
その後も私は入試委員会のメンバーを続けました。小川先生からは「佐々木さん、とにかく入試を改革してください」と言われてきましたからね。(6/10)