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私は研究者タイプではなく、フィールドで実践するタイプです。ですので、島根大学で教え始めて、改めて各分野には専門家の先生方がいらっしゃって、その重要性を実感しました。英語学でも生成文法や語法があり、英語教育学でも評価やスピーキングなど専門は異なります。大学は、専門的に研究されてきた方々から直接、それも集中的に学べる場です。学生の皆さんにはぜひ、この機会を大切にしてほしいですね。
異文化コミュニケーションはさまざまな文化圏の人々との交流が大切です。外国人でなくても、日本各地の地域文化、ジェンダー、世代などさまざまな文化があります。多様な文化に身を置いて、自分のアイデンティティを再確認しながら、いろいろな価値観を学んでいく。全てに賛成する必要などありません。異なる価値を認められるようになる。そのうえで、自分はどうしたいのか、何ができるかを学生時代に考えられるとよいですね。
時代は変わり、AIなどの発達によって高度な翻訳機も登場しています。でも、違いを認め合って理解する心、非言語の理解、そして心情の部分の理解は翻訳機には不可能です。人と人の交流の部分は、決して機械に置き換わるものではありません。
異文化コミュニケーションは頭だけで学ぶものではないと感じています。学校の先生方から、「英語はいやだ、英語はいらん」と言う児童がいると聞きます。でも、その子はサッカーが大好きで、将来はブラジルでプレーしたいと言っている。自分の好きなことを極めていくと、日本だけにはとどまらない。外国語を学び、それを駆使していろんな人とつながれる。子どもたちがそんな夢を持ってくれるといいですね。
その必要性を大人が感じさせられるかが重要です。それこそが、神田外語の卒業生たちができることです。そして、さまざまな人と出会い、文化の違いを認め合う姿勢こそが平和へとつながると信じています。(11/11)
大谷みどり(おおたにみどり)
昭和31年(1956)年8月生まれ。高校までを大阪府豊中市で過ごし、昭和50(1975)年4月に京都大学薬学部に入学。卒業後、雑誌記者を経て、米国に留学。ミネソタ大学ツインシティー校で異文化コミュニケーションと出合い、修士号を取得。昭和61(1986)年5月、佐野学園異文化コミュニケーション研究所の研究員に就任。黎明(れいめい)期の異文研を専門知識と実務面から支える。その後、アメリカン大学へ2度留学し、平成16(2004)年8月に博士号を取得。帰国後は、島根県松江市に拠点を移し、平成20(2008)年7月、島根大学教育学部特任教授に就任。現在は同大学の教育学研究科教職大学院の教授として異文化理解などの科目を担当するとともに、地域の学校における英語教育や異文化適応教育の課題解決に尽力している。近著に『特別支援教育の視点でどの子も学びやすい小学校英語の授業づくり』(明治図書、2020年4月)がある。