異文化理解の先駆者たち

第11回 大谷みどり 島根大学教授『異文化の学びを教育に還元する』

初めてのアメリカ留学で出会った
異文化コミュニケーションという学問

留学先のウィスコンシン大学スペリオール校はとても小さな大学でした。そこを選んだのは、「日本人はこぢんまりした環境の方がよい」と留学のあっせん会社に助言されたからです。現地ではコミュニケーションアート学研究科の修士課程でコミュニケーション学の基礎などを学びました。

でも、とにかくキャンパスも街もこぢんまりしていて、物足りなさを感じた私は、多様性を求めて、ミネソタ大学(ツインシティー校)に転学しました。ミシシッピ川を挟んでキャンパスが広がる全米でも有数の大規模な大学です。図書館も大きく、学部もたくさんあり、多くの著名な先生方がいらっしゃいました。

転学した当初は、マスコミュニケーション学部の大学院に在籍していました。議会に行って取材して記事を書く機会も多かったのですが、私は別に記者になりたいわけではありません。じゃあ、何がしたいのかと探しているとスピーチ・コミュニケーション学部があることを知ったのです。

スピーチ・コミュニケーション学部はいくつかの専門で構成されています。パブリック・コミュニケーション、インターパーソナル・コミュニケーション、グループ・コミュニケーション、組織コミュニケーション、そして異文化コミュニケーションです。

この異文化コミュニケーションの専門領域にウィリアム・ハウエル先生がいらっしゃいました。私は何も知らずに転学したのですが、ミネソタ大学のスピーチ・コミュニケーション学部は異文化コミュニケーションの分野では全米でも草分け的な存在で、かつトップクラスだったのです。

ハウエル先生が作った授業に「異文化コミュニケーション・ワークショップ(Intercultural Communication Workshop)」がありました。10人でひとつのグループを作るのですが、5人アメリカ人で、5人が非アメリカ人です。ジェンダーや貧困などのテーマについて議論するのですが、意見が違うので白熱した議論になります。それがすごく面白かった。

異文化コミュニケーション・ワークショップではふたりの学生がファシリテーターになります。ひとりはアメリカ人で、もうひとりが非アメリカ人。私がファシリテーターを務めたときのテーマはジェンダーについて。ペアを組んだアメリカ人が比較的年配の男性だったので少し安心しました。(2/11)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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