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神田外語大学では開学当初から異文化コミュニケーションを中心としたカリキュラムが組まれた。古田暁は英語やスペイン語、韓国語、中国語の各学科の教授たちと話し合い、すべての学科の学生が「基礎教育科目」として「日本研究」「コミュニケーション論」「国際理解」という三つの領域を学ぶカリキュラムを組んだ。そのうち、「日本倫理思想史」「コミュニケーション論」「異文化間コミュニケーション」の3科目は必修となった。日本の思想と、異文化とのコミュニケーションの両方を学ぶという理念がカリキュラムとして結実したのである。
開学2年目からスタートした「異文化間コミュニケーション」の講義は古田暁からの強い誘いを受けて神戸市外国語大学から転職した久米昭元が担当した。久米が担当した異文化コミュニケーションの授業ではビデオを活用した。例えば、大学の外国人教員に日本の学生について感じていることをインタビューし、録画した。外国人教員から『なぜ、日本の学生は質問しても手を上げないのか? 自分の国では学生はもっと積極的だった』という意見が出る。その映像を観て、学生は教員たちの異文化を理解できる。座学が中心の講義のなかで、学生たちが異文化理解を感覚的に捉えられるような工夫を凝らしたのである。
一般教育の教員も開学直後の大学とは思えないような充実ぶりをみせた。神山四郎(歴史学/慶應義塾大学名誉教授)、佐藤昭夫(美術/東京国立博物館学芸部長)、長尾昭哉(経済学/筑波大学名誉教授)、阿南成一(法学/筑波大学名誉教授)、山本修(化学・自然科学概論/通産省工業技術院科学技術研究所基礎化学部長)、寺田美奈子(生物学/早稲田大学副手)といった個性的な研究者たちが名を連ねた。古田自身も哲学の授業を担当した。また、教員のなかには、当時31歳だった矢内義顕(宗教学)など若い講師もいた。
基礎専門科目でも、神山四郎が「比較文明論」を担当し、長尾昭哉は「組織内コミュニケーション」を教えた。古田の理想と人脈によって集まってきた才能によって、深みのある一般教育と異文化コミュニケーションの学びが有機的に絡み合うカリキュラムが始動したのである。(10/15)