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古田暁は、平成11(1999)年3月に神田外語大学を定年退職となり、異文化コミュニケーション研究所の所長も退任した。後任の所長には、当時の学長だった石井米雄が就任した。平成13(2001年)、神田外語大学に国際コミュニケーション学科が設置された。その翌年の平成14(2002)年3月、古田は学術顧問としての役割を終え、約20年間にわたり奉職した佐野学園を離れた。
ひとりの研究者に戻った古田は中世の修道院の世界を紐解く翻訳に打ち込んだ。平成12(2000)年には『聖ベネディクトの戒律』(すえもりブックス)が翻訳出版された。これはカトリック最古の修道会の戒律を原文のラテン語から日本語へ翻訳したものである。平成19(2007)年には『祈りと瞑想 カンタベリーのアンセルムス』を翻訳出版した。昭和55(1980)年に出版した『アンセルムス全集』には含まれていなかった祈りと瞑想(祈祷集)の翻訳である。この翻訳によって、古田は博士論文のテーマとして選んだアンセルムスの全作品の日本語翻訳を終えた。40年以上の歳月をかけた偉業であった。
平成20(2008)年、古田は脳溢血で倒れた。平成22(2010)年には岩手県に移住し、現在はリハビリに励んでいる。平成23(2011)年の夏、岩手県に古田を訪ねた。岩手山を臨む大きな窓のあるリビングには古田の大好きな本がいたるところに積まれている。古田は、こんなことを話してくれた。
「佐野さんは、普通と違う。だからうまくいった。気が合ったんでしょうな。あちらもそうだし、こちらもそう。いろんな点からうまくいったんですよね。佐野さんにとっては、私のような人間がいるんでよかったし、私にとっては佐野さんのような人がいたから本当に生き延びることができたんですね。不思議なものですよ、物事っていうのは。あれだけの人ってのは、なかなかいるもんじゃないですよね。感謝してますよ、今でも。
面白いですね、人間っていうのは。本当に。いろんなところで、いろんな人と出会って、それで何かを身につけていくんですね。役立っているんです。本当にそれらは全部なくちゃダメだったんでしょうね。どっかで出会うんですよね。神田に出会えたっていうことが大きいですよね。 (14/15)