神田外語グループのいしずえを築いてきた人々

第9回 池田弘一神田外語大学名誉教授・ミレニアムハウス館長『日本を見つめ、世界の風を感じる』

世界中から風が吹いてくる。
そうでなきゃ、おもしろくない。

神田外語大学は、設立時から日本文化の学びを大切にしようという考えがありありました。きく枝先生はもちろん、佐野隆治会長もその想いが強かった。神田外語大学は日本にある外国語大学なんだと。ここで学ぶ学生は、日本のことをきちんと理解してから外国に行くという考えが設立のときからあった。

平成12(2000)年に僕は70歳の定年を迎えることになっていました。規約によって、教授職を辞任して、非常勤講師であと2年勤めるというのが普通でした。公一先生もきく枝先生もお亡くなりになり、佐野隆治会長が理事長を務められておられました。会長が「先生、どうするの?」とお聞きになるから、僕は「どうしようもないでしょ」って言ったんだ。だって、先々のことなんて何にも考えていないんだから。そうしたら、隆治会長は建物を建てようとおっしゃられた。そして、「先生、そこにいればいいじゃない」とおっしゃるから、僕は「いいですね」と答えた。伝統芸能などを上演できるホールと和室を作ることになった。それが「ミレニアムハウス」です。

ミレニアムハウスを設計する前に隆治会長と一緒に都内の劇場を見て回りました。とにかく使い勝手のよいホールにしようと思った。僕は幼い頃から寄席や芝居を観続けてきたし、楽屋裏もよく知っている。劇場によっては収納場所がなかったり、トイレの場所がとんでもないところにある。設計者の印象だけで作ってしまって、使い勝手を考えていない。ミレニアムハウスの舞台は奥行きがたっぷりとってある。幕を舞台の後ろに幕をひとつ下ろせばその裏を人が通れる。それぐらい広い舞台はなかなかありませんよ。

和室は、『八風居(はっぷうきょ)』と名付け、三味線や琴、書道の教室を開いています。『八風吹不動(八風吹けども動かず)』というのは元々、禅の言葉。不動の精神の尊さを説いている。神田外語大学は国際的なことを学ぶ場所だから世界中から風が吹いてくる。そうでなきゃ、おもしろくない。教員も、学生も、その風が吹く中で、「動くこととはどういうことか」「動かないこととはどういうことか」を考えるのがいい。動かずに、みんなで同じ方向ばかり見ていたら、戦中の大政翼賛会みたいになってしまう。僕は大志なんて持ったこともない。人はちょっと偉くなると、他人を働かせようとする。でも、真の意味で人のために働こうとするのはお金もなければ、権力もない人ですよ。八風居はある意味での道場。ここで世界から吹く風と自分を見つめてほしい。(10/11)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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