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50th Anniversary -Interviews-
大学は毎年、論文をまとめた「紀要」を出さなくちゃいけない。ところが最初の頃は書き手が少なかった。だから、僕は長唄の考察を1曲ずつ書いていった。1曲の考察を書くと抜き刷りを1000部ほど印刷する。それを各大学の邦楽の研究者や古典芸能の関係者、長唄の唄うたい、三味線弾きなどに配った。そうするうちに、義太夫協会、長唄協会、常磐津協会の人たちも僕を知るわけですよ。神田外語大学には変わった奴がいるってことが分かる(※3)。
平成19(2007)年に、長唄東唄会の創立50周年記念の演奏会で山田耕筰さんが編曲した長唄交響曲『鶴亀』を演奏した。そのときには、天皇、皇后両陛下のご進講の大役を仰せつかりました。ご先導役と解説の両方をさせていただいた。僕にもよく分からないんだけど、その大役が回ってきたんですよ。僕はずっと幸運に恵まれています。幸せの運がついてるんですよ。
僕はいつも「『神田外語大学』名誉教授の池田弘一」と紹介してもらっている。名誉教授はどうでもいい。神田外語大学の名前が出るのが大事。NHKの『ラジオ深夜便』の『邦楽夜話』も7年間出演しましたけど、必ず神田外語大学ってのを言ってもらった。それも番組の始まりと終わりだけじゃダメ。途中でも2、3回言ってもらわないと。アナウンサーの宇田川清江さんはちゃんと言ってくれた。あの番組は全国放送だからね。7年間続けりゃ知ってもらえる。地方に講演に行ったときも、「あっ深夜便の池田さんですか。神田外語大学ですよね」と言ってくれる。とにかく繰り返し、そして根気ですな。
学生部長をしていた頃は、千葉県を中心に高等学校50校以上を回りました。そのうちの半分は、かみさんの運転です。うちのかみさんも神田外語大学のことだが大好きだから。訪問する前は、まず、巻き紙に筆で手紙を書いて予約を取る。やっぱ人は驚かさなきゃ。2時間くらい話をして、1日に2校、3校回る。神田外語大学を印象づける。それに、自分ががんばったから、それで結果が出るなんて思わなきゃいい。成果なんて望まなくていい。だって、悪い結果も、結果でしょ。自分で完成するなんて思わなくていいし、重荷を背負わなくていい。胸が詰まって晩酌ができないようじゃ困りますよ。(9/11)