神田外語グループのいしずえを築いてきた人々

第26回 長谷川貢神田外語学院元教務センター長 教育の質と成果にこだわる専門学校を目指して

日本の英語教育に大きな影響を与えたタスクベース学習法の研究と実践

平成元(1989)年4月、神田外語学院の専任講師となりました。非常勤講師から、1年間で専任講師になるのは異例の早さでした。

教え始めて驚いたのは1980年代の後半から神田外語学院が「タスクベース学習法」の研究に取り組んでいたことです。グディングス先生が、神田外語大学のフランシス・ジョンソン教授と始めたプロジェクトです。

タスクベースとは、学生に実生活で英語を使う場面の課題を与えて、その解決を通じて必要な英語を学んでいく学習法です。単に英文や単語を丸暗記する従来の英語教育とはまったく異なるものです。

このプロジェクトには、オーストラリアのマッコーリー大学で研究をしていたクリストファー・カンドリン教授、そしてデイヴィッド・ヌーナン教授がコンサルタントとして参画しました。ふたりとも英語教授法の学会ではスタンディングオベーションを受けるような世界的に著名な研究者です。言語学でいえばチョムスキーぐらいの権威が神田外語学院に来て、アドバイザーを務めたのです。平成4(1992)年、平成5(1993)年のことでした。

私もプロジェクトに参加することができました。カンドリン、ヌーナンの両教授に教授法について尋ねると、次から次へと専門書のタイトルを教えてくれました。本当に貴重な体験でした。学院では、平成6(1994)年にタスクベース学習法を導入し、翌年にはオリジナルの教科書「Options」を使い始めました。

JALT(全国語学教育学会)で、学院がタスクベース学習法について発表したときには、会場で立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。主に大学の研究者が発表する学会で専門学校の発表がこれほど注目を集めるのは異例なことでした。

高校の英語の教科書では、チャプターの最後にある練習問題を「エクササイズ」としていましたが、それがある時期から「タスク」に変わりました。

先生の発話する英語を復唱するのではなく、生徒に課題を与えるタスクでは、グループでタスクを解決する内容を考えて、必要な単語を探していくうちに、自然に会話が巻き起こる。それが語学の効果的な習得につながるのです。教科書のエクササイズがタスクに変わったことに神田外語学院の教育と研究は大きく貢献していると思います。

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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