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50th Anniversary -Interviews-
目指すべき英語教育の基本は「タスクベースド・ラーナーセンタード・シラバス」です。英語教育のカリキュラムづくりには、コンサルタントとして、オーストラリアのマッコリー大学から、応用言語学の権威であるクリストファー・カンデリンとデイヴィッド・ヌーナンの両教授を招きました。両教授の指導のもと、学院の教員たちは、リーディング、ライティング、グラマーなどすべての科目を検証していきました。僕はただひたすら、文献リストの専門書を読みあさりました。カンデリン、ヌーナンという世界的な学者と議論するには、とにかく勉強するしかありません。
新しいカリキュラムづくりと平行して、オリジナルのテキスト“Options”も編集していきました。10名近くの教員が執筆に参加しました。ただ、これは難産でした。英会話のテキスト作成で著名だった開発研究者をイギリスから招聘したのですが、夏休みには、まるごと2カ月帰国してしまいます。仕事よりバカンスを重視する外国人と、12カ月働く私たち日本人職員とでは仕事のペースがまったく違うのです。教員同士、職員と教員の間で生じる英語教育への理解の違い、情報共有や意思疎通の問題といったものが、徹夜で専門書を読むことよりも、私にはずっと苦痛でした。
このテキストを試験的に導入できたのは、平成7(1995)年になってからでした。一部のクラスだけで使って、おかしな箇所を見つけ出し、修正していきました。4技能を統合して教えるタスクベースド・ラーナーセンタード・シラバスは、素晴らしい英語の教授法でした。それゆえに、この教授法を職業専門教育にも導入するべきだと考えました。学生が企業でも評価される実践力を養えると判断したからです。ですから、平成8(1996)年に、専門職業コースを含むすべてのコースで導入できたときはホッとしました。委員会は解散しましたが、僕は、教育センターの副センター長に就任し、完成したシラバスを実践させていく立場になりました。
新しいカリキュラムの導入は、教員の意識改革の場でもありました。外国人教員のなかには、「カンデリンやヌーナンといった第一線の研究者の教授法を学院の教育に導入する必要があるのか」という声もありました。それに、新カリキュラムでは学生一人ひとりの語学力を4技能それぞれについて評価する“Can-do Statement”が教員には課せられていました。1クラス30人で4クラス受け持っていれば120人分のシートを教員は書かなければならない。快く思わない教員がずいぶんといたことは事実です。(9/15)